研究課題/領域番号 |
20K08901
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小澤 厚志 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (10573496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 腫瘍症候群 / マウス |
研究実績の概要 |
多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1型)の標的内分泌組織の腫瘍化における、MEN1遺伝子両alleleの欠失、すなわちMEN1遺伝子のヘテロ接合性の欠失(loss of heterozygosity: LOH)の機構解明のため、令和3年度までに、 1)Men1ヘテロ欠損マウスでの膵内分泌腫瘍発症前段階における変動遺伝子群の解析をcDNAマイクロアレイ法にて解析し、既に膵神経内分泌腫瘍が発症している10-12月齢のマウスと比較して、DNA複製因子群、細胞周期調節因子群などでの遺伝子変動が多いことが判明した。 2)膵内分泌腫瘍細胞株を用いたmeninおよびJunDに結合する蛋白質群の単離を試みたが、免疫沈降法に適した抗体がなく、同手法による解析は中止した。 3)2010年以降、当院の内分泌糖尿病内科および遺伝子診療部でMEN1型の診断が確定された患者のうち、膵内分泌腫瘍の手術適応を満たし、外科的切除術を施行された症例のホルマリン固定パラフィン包埋された腫瘍標本から未染色切片を作製し、クロモグラニンA, シナプトフィジン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、meninへの各抗体を用いて免疫染色を行い、またMIB-1 indexも計測した。ヒトMEN1型に発症する膵内分泌腫瘍ではmeninの染色性は一様でないことが判明した。meninの染色性とMIB-1 index, 機能性・非機能性腫瘍の観点から全症例を4グループに分類し、各グループからn=3としてTotal RNAを抽出した。更にこれらRNAサンプルからrRNAを除去した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MEN1型におけるLOH発症機構の解明のために、令和2年度までに、1)MEN1型モデルマウスより単離した膵内分泌細胞を用いての腫瘍発症前段階における変動遺伝子群の解析、2)膵内分泌腫瘍細胞株を用いてのmeninおよびJunDに結合する蛋白質群の単離と同定を計画し、令和3年度以降には、3)ヒトMEN1型に発症した膵内分泌腫瘍の手術検体を用いての遺伝子発現解析、4)1)から3)で同定されたLOHに関与する遺伝子(群)の機能解析を計画していたが、1)については、当初の計画通りに試料の単離・精製からcDNAマイクロアレイ解析まで施行し、野生型と比較して複数の変動遺伝子群を抽出した。2)については、免疫沈降法に利用できる抗体が得られなかった。3)については、次世代シークエンサーによる解析のための試料の準備まで完遂できたため。
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今後の研究の推進方策 |
1)Men1ヘテロ欠損マウスの膵内分泌腫瘍発症前段階における変動遺伝子群につき、これまでの発表論文や遺伝子データベースを検索し、LOH発症に関与する遺伝子群の絞り込み作業を引き続き施行する。候補遺伝子群が同定されれば、実際のマウス膵内分泌組織における遺伝子発現解析を定量的qPCR法や免疫染色法など用いて行う。 2)ヒトMEN1型に発症した膵内分泌腫瘍より抽出したTotal RNAサンプルからrRNAを除去したものを試料としてクオリティチェックを行い、シークエンスライブラリー調整後にRNAシークエンシングを行い、解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の研究計画として、ヒトMEN1型に発症した膵内分泌腫瘍組織から抽出したRNAを用いてのRNAシークエンスを行う予定で、クオリティーチェック、ライブラリー調整、シークエンス、データ解析に費用がかかる。また令和3年度までの研究の結果から絞り込まれた遺伝子/蛋白質のマウスおよびヒトの腫瘍部、非腫瘍部における発現解析を行うための、試料精製費用、各種抗体を含む免疫染色費用、qPCRプローブ購入費用に使用予定であるため。
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