研究課題
本研究では、開口放出制御因子ELKSの脂肪細胞選択的欠損マウス(ELKS cKO)の解析と、アディポカイン放出におけるELKS複合体の解析を進めることで、生体恒常性維持におけるアディポカイン分泌調節機構の役割を解明する。当該研究年度において、ELKSの足場タンパク質脂肪細胞における欠損は、高脂肪食負荷による脂肪肝の発症を促進することが明らかになった。また、ELKS cKOマウスではASTとALTという脂肪肝の生化学的指標が有意に上昇し、脂肪肝の組織病変が観察された。これらの結果から、ELKSは脂肪細胞における貯蔵脂質の管理に関与している可能性が示唆された。分子メカニズムを探るべく、細胞生物・生化学的にELKSの液―液相分離を観察した結果、神経型ELKSは脂肪細胞型ELKSよりも優れた液滴形成能を持つことが明らかになった。脂肪細胞型ELKSは長いC末端とFIP3様ドメインを持ち、これが液滴形成に影響している可能性が推測された。さらに、グルコース欠損によりELKS液滴は拡散された。これらのことから脂肪細胞ELKSの液―液相分離はエネルギー代謝により制御される可能性が示唆された。液―液相分離はタンパク質複合体形成において、液―液相分離は重要な役割を果たすと考えられている。本研究でELKSはRab3、Rab6、Rab12、Rab18を動員することを見出した。さらに、ELKS液ー液相分離は、活性型Rabの安定性を有意に上昇させた。ELKSの欠失変異体を作製し、Rabに結合するドメインの同定を試みた。その結果、Rab6はC末端に結合ドメインを有することが解った。その他のファミリーはRab6結合ドメインとは異なる領域で相互作用した。これらの相互作用は免疫沈降での解析が容易ではなく、液滴動員のみで観察されることから、液―液相分離が関与していると考えた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Human Genetics
巻: 67 ページ: 679-686
10.1038/s10038-022-01073-6.
Neurology Genetics
巻: 8 (1) ページ: e651
10.1212/NXG.0000000000000651