研究課題
テトラヒドロビオプテリン(BH4)が欠乏したマウス(hph-1マウス)は、BATの分化・成熟障害をきたしており、出生時の体温がコントロールマウスにくらべ低下している。さらに、この2群を高脂肪食にて飼育したところ、BH4欠乏マウスは肥満が助長され糖代謝障害を認めた。このように、出生時のBH4欠乏に起因するBAT機能障害は、成長後のメタボリックシンドローム発症にも関与する可能性が示された。BH4によるBAT機能障害に関与する因子を探索するために、出生直後の2群のBATについて、RNAシーケンス解析、およびメタボローム解析を行った。2群の遺伝的、代謝的特徴について判別が可能であり、判別に寄与する因子を複数同定できている。さらに、BH4欠乏マウスの出生前の胎児の時期より、母体BH4欠乏マウスにBH4を胎盤内投与すると、出生時のBAT機能が回復していることが明らかとなっている。この胎盤内BAT投与後に出生したマウスのBATのRNAシーケンス解析、メタボローム解析の特徴を調べたところ、BH4欠乏マウスよりもコントロールマウスのBATに近い遺伝的、代謝的特徴を有していることが示された。本研究により、BH4が胎児期のBAT機能を制御するだけでなく成長後の代謝状態を規定していることが明らかとなった。さらに、この機能に関与する因子を見出しており、新たな糖尿病・肥満症の発症予防、治療の標的の開発につながる成果が得られた。
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