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2020 年度 実施状況報告書

コレステロールにより制御される長鎖非コードRNAの機能解析とその臨床応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K08904
研究機関京都大学

研究代表者

堀江 貴裕  京都大学, 医学研究科, 助教 (20565577)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードノンコーディングRNA / コレステロール / 動脈硬化
研究実績の概要

ヒトゲノムの蛋白をコードする遺伝子領域は2%程度であり、残りの領域から多くの非コードRNA(non-coding RNA;ncRNA)が転写されている。申請者らは20塩基長程度の短鎖ncRNAであるmicroRNA(miRNA、miR)と心血管代謝性疾患について検討を重ねてきた。一方、200塩基長以上の長鎖ncRNA (long non-coding RNA: lncRNA)についてもその重要性が明らかとなりつつある。理研のFANTOM5データ解析からは、ヒトには約28000のlncRNAが発現し、約70%が機能を有することが示唆されている。しかし、個々のlncRNAの機能や病態への関与などについてはほとんどが明らかでない。今回、ヒトTHP1マクロファージ細胞においてコレステロール量を変化させるとlncRNAがダイナミックに変動していることが網羅的解析から明らかとなった。一定の発現変化を示す21種のlncRNAの中で、発現量が多く、発現変化も大きなlncRNA(lncRNA-M)について検討を開始した。本年度では、lncRNA-Mについて主に細胞実験を行なった。lncRNA-Mは、ヒトやマウスなどにおいてゲノム上の位置、配列は保存されていた。ヒト由来THP1と同様の発現変化をマウス由来J774でも認めた。THP1マクロファージ細胞において、lncRNA-Mをノックダウン或いは過剰発現させることによりコレステロール代謝遺伝子の発現が変化をしめした。さらにlncRNA-M欠損マウスを作成し、解析を開始した。これらの解析を通じて、脂質代謝異常や動脈硬化に関わるlncRNAを同定し、新たな治療標的へつなげる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は、細胞実験による表現型の確認と動物実験を開始する予定で有り、当初の予定通りに順調に経過している。THP1細胞を用いて、lncRNA-Mをレンチウイルスベクターを用いてノックダウンしたところコレステロール関連遺伝子が変動した。この結果から、lncRNA-Mはコレステロール代謝に重要な役割を果たしていることが想定された。また、生体での役割を明らかにするためにlncRNA-M欠損マウスを作成した。現在、京都大学医学部動物実験施設にて繁殖を行なっている。定常状態での解析を進めると同時に、高脂肪食負荷あるいは動脈硬化モデルマウスとの交配を予定している。現在のところ、当初予定通りの進捗状況と考える。また、学会発表や論文発表も精力的に行なうことができた。

今後の研究の推進方策

来年度は、生体における役割をより明らかにするためlncRNA-M欠損マウスの解析を進める予定である。特に定常状態での解析に加えて、高脂肪食や高コレステロール負荷食、さらには動脈硬化モデルマウスとの交配を進める予定である。これらの表現型を解析することにより、lncRNA-Mの生体における役割、さらには病態における役割が明らかになると期待される。また、lncRNA-Mが治療の標的となりうるかどうか、AAVウイルスやRNAオリゴを用いた動物実験を行なう予定である。さらにヒト疾患での関わりを公共データベースなどを用いて検討を加えていきたい。

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究が細胞実験顔も出会ったことと、当初予定していたマウスケージ数がそこまで必要でなく、その代金がかからなかった。またCOVID-19のため、学会がWeb開催となったため、当初予定した旅費を今年度は使用することがなかった。次年度はマウス解析が中心となり、マウスケージが大幅に増えることが予想され、またその解析に費用がかかることが予想される。繰り越した研究費をそちらに使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] MicroRNA-33 maintains adaptive thermogenesis via enhanced sympathetic nerve activity.2021

    • 著者名/発表者名
      Horie T, Nakao T, Miyasaka Y, Nishino T, Matsumura S, Nakazeki F, Ide Y, Kimura M, Tsuji S, Ruiz Rodriguez R, WatanabeT, Yamasaki T, Xu S, Otani C, Miyagawa S, Matsushita K, Sowa N, Omori A, Tanaka J, Nishimura C, Picciotto MR, Inoue H, Watanabe D, Nakamura K, Sasaki T, Kimura T, Ono K, et al.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 12 ページ: 843

    • DOI

      10.1038/s41467-021-21107-5.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Functional Non-coding RNAs in Vascular Diseases.2020

    • 著者名/発表者名
      Ono K, Horie T, Baba O, Kimura M, Tsuji S, Ruiz Rodriguez R, Sawa M, Kimura T.
    • 雑誌名

      FEBS Lett.

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1111/febs.15678.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] LincRNA alleviates cardiac systolic dysfunction under pressure overload.2020

    • 著者名/発表者名
      Kuwabara Y, Tsuji S, Nishiga M, Izuhara M, Ito S, Nagao K, Horie T, Watanabe S, Koyama S, Kiryu H, Nakashima Y, Baba O, Nakao T, Nishino T, Sowa N, Miyasaka Y, Hatani T, Ide Y, Nakazeki F, Kimura M, Yoshida Y, Inada T, Kimura T, Ono K.
    • 雑誌名

      Commun Biol.

      巻: 3 ページ: 434

    • DOI

      10.1038/s42003-020-01164-0.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Homeobox A4 suppresses vascular remodeling by repressing YAP/TEAD transcriptional activity.2020

    • 著者名/発表者名
      Kimura M, Horie T, Baba O, Ide Y, Tsuji S, Ruiz Rodriguez R, Watanabe T, Yamasaki T, Otani C, Xu S, Miyasaka Y, Nakashima Y, Kimura T, Ono K.
    • 雑誌名

      EMBO Rep.

      巻: 21 ページ: e48389

    • DOI

      10.15252/embr.201948389.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ABLE-MET Investigators. Effects of Metformin on Left Ventricular Size and Function in Hypertensive Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: Results of a Randomized, Controlled, Multicenter, Phase IV Trial.2020

    • 著者名/発表者名
      Ono K, Wada H, Satoh-Asahara N, Inoue H, Uehara K, Funada J, Ogo A, Horie T, Fujita M, Shimatsu A, Hasegawa K.
    • 雑誌名

      Am J Cardiovasc Drugs.

      巻: 20 ページ: 283-293

    • DOI

      10.1007/s40256-019-00381-1.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Utility of collagen-derived peptides as markers of organ injury in patients with acute heart failure.2020

    • 著者名/発表者名
      Nagao K, Tamura A, Sato Y, Hata R, Kawase Y, Kadota K, Horie T, Sowa N, Nishiga M, Ono K, Inada T, Tanaka M.
    • 雑誌名

      Open Heart

      巻: 7 ページ: e001041

    • DOI

      10.1136/openhrt-2019-001041.

    • 査読あり
  • [学会発表] High-intensity statins work regardless of age. (Debate: Lipid Management: Is there Anything Beyond LDL?)2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Horie
    • 学会等名
      第84回 日本循環器学会
    • 招待講演
  • [学会発表] miR-33b has more impact on the formation of insulin resistance and atherosclerosis than miR-33a.2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Horie, Satoshi Koyama, Takeshi Kimura, Koh Ono
    • 学会等名
      第84回 日本循環器学会
  • [備考] 京都大学循環器内科 分子循環器グループ

    • URL

      http://kyoto-u-cardio.jp/kisokenkyu/metabolic/

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公開日: 2021-12-27  

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