研究課題/領域番号 |
20K08905
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福原 淳範 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (00437328)
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研究分担者 |
大月 道夫 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00403056)
奥野 陽亮 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10534513)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケトン体 / 乳酸 / グルタミン / 脂肪細胞 / アディポサイトカイン |
研究実績の概要 |
脂肪細胞はケトン体や乳酸、グルタミンの産生細胞である。本研究の目的は、これらの脂肪細胞に対する作用とシグナル伝達機構、全身の代謝に対する作用を明らかにすることである。 乳酸:アディポネクチンCreマウスとLDHAfloxマウスを交配することで、脂肪細胞特異的LDHA欠損マウスを作出した。本マウスは普通食での飼育では体重や組織重量に差を認めなかった。空腹時の血糖値に差を認めなかったが、インスリン値は高値であった。また、グルコース負荷テスト、インスリン負荷テストに差を認めなかった。マウスの糖取り込みを測定すると、脂肪組織の糖取り込みが低下しており、インスリン非依存性な糖取り込みトランスポータであるGlut1の発現が低下していた。3T3-L1脂肪細胞に対してLDHAのsiRNAを行ったところ、Glut1の発現低下と糖取り込みが低下した。以上より脂肪細胞における乳酸合成酵素であるLDHAはGlut1の発現を制御し、インスリン非依存的な糖取り込みの制御に関与することが明らかになった。本マウスの脂肪組織とLDHAのRNAseq解析とメタボローム解析、siRNAを行った3T3-L1脂肪細胞のRNAseq解析を行っており、両者を比較することで、乳酸合成に関連して変化する遺伝子群と代謝物を探索中である。
ケトン体:3T3-L1脂肪細胞にケトン体を添加すると、脂肪細胞のインスリンシグナルが増強することを見出した。脂肪細胞機能を制御するPPARγや抗酸化酵素も増加しており、インスリン誘導性の脂肪酸合成酵素の発現量も増加した。
グルタミン:3T3-L1脂肪細胞でグルタミン合成酵素であるGlulの阻害剤であるMSOを投与すると、中性脂肪分解に関与するATGLの遺伝子発現が増加することを見出した。この時、脂肪細胞のbasalのlipolysisも増加しており、グルタミンは脂肪細胞のlipolysis制御因子であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
それぞれの代謝因子の脂肪細胞に対する作用を明らかにした。それぞれの標的遺伝子を同定しており、計画以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
乳酸:脂肪細胞特異的LDHA欠損マウスで得られたデータから、乳酸によるシグナル伝達の標的因子の解析を進めている。
ケトン体:3T3-L1脂肪細胞においてケトン体合成酵素Hmgcs2のノックダウンと過剰発現を行い、脂肪細胞機能の解析を行う。マウスに対してケトン体を投与し、脂肪細胞機能の変化を解析する。
グルタミン:マウスを用いてグルタミン補充による脂肪細胞機能の変化を解析する。
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