研究課題
ストレス応答はHPA軸がその中枢を担う、生体の恒常性の維持に極めて重要な機構であり、ストレス刺激によりHPA軸が賦活化され最終的に副腎よりコルチゾール分泌が誘導される。その軸のいずれかの部位に生じた障害によりコルチゾール分泌不全は生じ、結果としての副腎不全をきたす。現在、副腎不全の診断法としてホルモンの基礎値のみならずインスリン低血糖試験や迅速ACTH試験など様々な刺激試験を組み合わせて行っている。しかし各種検査の実施にはリスクが伴い、結果の解釈には経験を必要とする上にそれら検査結果が病態を正確に反映していない場合も多く、不適切な補充療法がなされるケースも散見されることから、病態を正確に反映する簡便なマーカーが必要とされてきた。今回代表者がマウスから見出した血中microRNAを副腎不全の新規マーカーとして期待されるものであり、当科の患者検体を用いて検討を行い診断マーカーとしての確立を目指すこと、そして新たな生理活性物質としての側面からストレス応答において果たす生理的役割を明らかにすることが本研究の目的である。以前の検討で見出したストレス下において誘導されるマウス血中miRNAの分泌がどの臓器で検出可能か、まずマウス由来corticotroph由来細胞株とマウス下垂体初代培養細胞に対してデキサメタゾン処理した時のmiRNA発現増加をRT-PCR法で検討したが、下垂体では有意な増加反応は認めなかったことから、血中miRNAのソースとしては否定的と考えた。その他の実験系としてヒトACTH単独欠損症のハイドロコートン補充前後の血清を用いてメタボローム解析を行い、ステロイド補充に関連して複数種の血中代謝産物の変化を認め、現在再現性とその意義を検討する予定である。今後実際の副腎不全モデルマウスおよびACTH単独欠損症患者に対して補充前後における血中エクソソームを抽出し、miRNA-seqを用いてバイオマーカー探索やパスウェイ解析を行う予定である。
3: やや遅れている
当科にて凍結保存していたヒト副腎不全症の血液からエクソソーム抽出を行いmiRNAの網羅的解析を行う予定であったが、サンプルが経年変化のため検討可能な量の抽出ができなかった。現在、患者検体を再収集し再解析を行う予定であるが、新型コロナによる影響で患者の入院予定に大幅な遅れが出ている。また同様にエクソソーム抽出に必須である学内の共同研究室にある超遠心分離機が故障のため修理に時間を要している状況である。解析可能になればすぐに再開する予定である。
エクソソーム抽出が再度可能な状況になれば、まずマウスおよびヒト副腎不全モデルより得られた血液サンプルからエクソソームを抽出し、網羅的解析を行い、標的となる分子を同定する予定である。
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