研究実績の概要 |
【背景・目的】我々は肥満マウスを用いたポジショナルクローニング法により新規糖尿病感受性遺伝子Ildr2を同定し、ILDR2が脂肪肝発症に重要な因子であることを見出した。この分子機序解明のため、ILDR2結合タンパク質を探索したところ、新規結合分子としてリン脂質脂肪酸転移酵素(MBOAT7)を同定した。しかし、ILDR2の機能やMBOAT7との相互作用、脂肪肝進展における意義は明らかでない。そこで本研究では、ILDR2発現低下が脂肪肝進展に影響を及ぼすかどうかを検討した。 【方法】ILDR2-floxマウスにAAV-Creを投与した肝臓特異的ILDR2ノックアウトマウス(LKO-ILDR2)にコリン欠乏・メチオニン減量高脂肪食(CDAHFD, 45kcal%)を与えた脂肪肝モデルマウスを作製し解析した。 【結果】CDAHFD(45kcal%)を与えたLKO-ILDR2マウスでは、コントロールと比べてより早期に脂肪肝を呈し、肝線維化が促進された。また、LKO-ILDR2マウス肝臓中のリン脂質、ホスファチジルコリンは低下傾向、ホスファチジルイノシトールは増加傾向が示され、LKO-ILDR2マウスの肝臓中リン脂質組成に変化が認められた。 【考察】当初の仮定通りにLKO-ILDR2マウスの肝臓中性脂肪は、早期に脂肪肝を呈し、肝線維化が促進することを見出した。この結果は、ILDR2が肝臓中のリン脂質の質的変化に関与したためであることが示唆された。しかしながら、未だ、ILDR2とMBOAT7の相互作用と肝臓におけるリン脂質変化とのかかわりは明らかでない。そのため、今後さらなるILDR2-MBOAT7の役割を解明する必要がある。
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