研究課題/領域番号 |
20K08916
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 航 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (10772783)
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研究分担者 |
池田 和博 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30343461)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ステロイドホルモン / 遺伝子発現 / 乳がん / 子宮体がん / Efp |
研究実績の概要 |
エストロゲンは乳がん、子宮体がんなどの女性がんの増殖・進行と深い関係を有しており、これらのがんの多くはエストロゲン受容体(ER:estrogen receptor)を発現している。乳がんではホルモン療法が奏功するものの、治療中に抵抗性を獲得するものが多く、問題となっている。また、子宮体がんについてはホルモン療法の効果は限定的である。これらのことからエストロゲン制御とその逸脱機構の解明は、女性がんの診断・治療へ繋がると期待される。申請者らが独自に単離したエストロゲン応答遺伝子Efpはエストロゲン応答性の乳がん、子宮体がんに加えて、ホルモン抵抗性を獲得したがん細胞においても発現しているが、その役割は明らかではない。最近、EfpはER陽性/陰性に関わらず乳がんの転移に関わる遺伝子発現のヒエラルキーにおいて最も上位のマスター遺伝子となることが報告され、さらに、EfpはRNA結合タンパク質として機能することも示されている。本研究は、これらのこれまでにない視点での女性がんにおけるEfpの役割の解明を目指す。また、患者由来がん細胞と異種移植を活用した臨床により近いモデルの構築を行い、エストロゲン制御機構からの逸脱とホルモン療法抵抗性のメカニズムの解明とその克服法の開発を目指す。本年度はER陰性の乳がん細胞において、Efpの発現低下系と過剰発現系を構築し、細胞増殖、移動能などにおける役割を検討した。また、RNA免疫沈降法により、Efpタンパク質に結合するRNAの探索を進めた。また、ホルモン依存性乳がんの進行に関わる非コードRNAであるTMPO-AS1が、エストロゲン非依存性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)においても高発現しており、E2FやTGFβシグナル伝達経路を調節し、細胞増殖と遊走を制御することを明らかにした。さらに、TMPO-AS1を標的とするsiRNAがマウスを用いた異種移植腫瘍モデルにおいて、腫瘍増殖抑制効果を示し、治療標的となる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳がん、子宮体がんにおいてER陽性と陰性の細胞株を用いて、エストロゲン応答遺伝子Efpならびに非コードRNAであるTMPO-AS1の発現をsiRNAによりノックダウンする系ならびにベクターにより過剰発現する系を構築し、細胞増殖、遊走能、アポトーシス、エストロゲン応答性、ホルモン治療薬に対する反応性を解析した。また、女性がんの患者由来組織を用いて三次元スフェロイド培養を行い、患者由来がん細胞(patient-derived cancer cell, PDC)の作製を進めている。さらに、RNA免疫沈降法の実験系の確立に取り組んでおり、Efpタンパク質と結合するRNA分子の探索を進めている。これらにより、本研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株や患者由来がん細胞を用いて遺伝子発現解析を行い、Efp遺伝子に制御される遺伝子の絞り込みを進める。候補となる遺伝子についてはEfpに対するsiRNAを用いたノックダウン系とEfp過剰発現系により遺伝子発現調節を解析する。Efpタンパク質と結合するRNA分子の探索をRNA免疫沈降法などの方法を用いて解析を進め、ホルモン感受性と抵抗性のがん細胞で比較検討する。これらの解析から絞り込んだ遺伝子やRNA分子については細胞株での機能解析を進める。さらに、女性がんの臨床サンプルにおける候補遺伝子の発現を解析し、病理学的因子や患者予後との相関、診断学的価値の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者由来がん組織からの三次元スフェロイド培養法の条件検討が順調に進み、当初予定した培地試薬関連の使用量が抑えられた。次年度は患者検体数を追加して、患者サンプルからの三次元スフェロイド培養と解析を施行する。
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