エストロゲンは乳がん・子宮体がんなどの女性がんの増殖・進行と深い関係性を有しており、これらのがんの多くはエストロゲン受容体を発現している。乳がんではホルモン療法が奏功するものの、治療中に抵抗性を獲得するものが多く問題となっている。また、子宮体がんについてはホルモン療法の効果は限定的である。これらのことからエストロゲン制御とその逸脱機構の解明は、女性がんの診断・治療へ繋がると期待される。研究代表者らが独自に単離したエストロゲン応答遺伝子Efpはエストロゲン応答性の乳がん・子宮体がんに加えて、ホルモン療法抵抗性のがん細胞においても発現しているが、その役割は明らかでない。最近、EfpはER陽性/陰性に関わらず乳がんの転移に関わる遺伝子発現のヒエラルキーにおいて最も上位のマスター遺伝子になることが報告され、さらにはEfpがRNA結合タンパク質として機能することが想定されている。本研究では、これら最新の視点に基づき、女性がんにおけるEfpの役割の解明を目指す。また、患者由来がん細胞(PDC)を活用した臨床により近いモデルの構築を行い、エストロゲン制御機構からの逸脱とホルモン療法抵抗性のメカニズム解明を目指す。 本年度は、共にトリプルネガティブ乳がん由来のPDC (TNBC-PDC)とMDA-MB-231細胞株を用いて解析を進めた。これらの細胞においてEfpをノックダウンするとCDCA7、HELLSなどの細胞周期関連遺伝子の発現減少が認められた。このCDCA7とHELLS遺伝子に対するsiRNAを用いて細胞増殖試験を行ったところ、細胞増殖が抑制されることを明らかにした。これらより、ホルモン療法抵抗性乳がんの増悪化にEfpが関与することを示し、本知見を日本癌学会学術総会にて口演発表し、英文原著として論文発表を行った。
|