研究課題
これまでの2年間に引き続き、インスリン分泌細胞とグルカゴン分泌細胞のグルコース代謝やアミノ酸代謝に関連する遺伝子の発現修飾を行い、インスリンおよびグルカゴン分泌への影響を解析した。まず、昨年までの成果を論文として発表したが、論文改訂の過程でSox11遺伝子の重要な役割に気づき、解析を加えた。Sox11は、epitherial-mesenchymal transition (EMT) において重要な役割を果たしていることが最近注目されているが、本研究でグルコース代謝調節にも重要な役割を演じていることが明らかになった。EMTにおいて、metabolic reprogrammingが起こることは、よく知られている。インスリン分泌細胞も胎生期から新生時期への成熟過程で、細胞数の増加とmetabolic reprogrammingによってグルコース応答性の獲得が起こるが、Sox11がこれら両者において重要な役割を果たしていることが示唆された(Tanaka et al., Sci Rep 2023)。一方で、いくつかの課題が浮き彫りになった。我々は、遺伝子発現抑制をshRNAの発現によって行っているが、これには平均的に5~7日を要する。この間に様々な2次的な変化が起こる。今後、遺伝子発現抑制を短期間に達成するような方法を取り入れる必要性が明らかになった。現在そのための準備も始めているところである。インスリン分泌細胞とグルカゴン分泌を用いた偽膵島を作成した上での解析においては、インスリン分泌細胞のインスリン分泌能を抑制するような修飾を行うと、偽膵島におけるインスリン分泌細胞とグルカゴン分泌細胞の分布が変化することを見出した。今後、インスリンそのものが重要なのか、他の因子が重要なのかも解析していきたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件)
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