研究課題/領域番号 |
20K08927
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗原 將 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (40724894)
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研究分担者 |
檜山 英三 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 特任教授 (00218744)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / テロメア / TERT / FISH法 / 再構成 |
研究実績の概要 |
3例のMYCN増幅陽性神経芽腫の症例と11例のMYCN非増幅症例の計14例について、腫瘍培養検体においてTERT-PR(プロモーター領域)のrearrangement(再構成)について検討を行った。TERT- PR rearrangementは,Chr5.p15.33領域内のTERTの上流と下流にそれぞれ違った蛍光の標識したプローブを設計して多重染色FISH法にて検討をした。今回検討したMYCN増幅陽性群にはTERT-PR rearrangementを認める症例はなく,非増幅症例11例中2例でTERT-PR rearrangementを認めた。それぞれの症例でTERT mRNAの発現量を測定したところ,TERT-PR rearrangement陽性群では4513,5359 copies/GAPDH, TERT-PR rearrangement陰性群では0-139.5 copies/GAPDH(平均53.6)であり,明らかにTERTの発現量が増幅していた。この2症例とも治療が奏功しておらず予後不良であった。 神経芽腫の生物学的特性の層別化に関して,特にMYCN非増幅症例において本法による検討は有用と考えられるが,非常に希少な疾患であり,新規に同様の変異を認める症例が得られず,症例の蓄積に難渋している。腫瘍の初代培養検体においてTERT-PR Rearrangementを認めた症例において,FFPEでも同様に検討を行ったところ,同様にTERT-PR Rearrangementを検出することができ,検体保管の簡便さで臨床応用の際に有用と考えられた。 一方で,一細胞解析も併せて施行しており,遠隔転移や再発をきたしやすい神経芽腫の生物学的特性についても検討を重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ここ数年の神経芽腫の新規症例において,TERT-PR Rearrangementを認める新規症例が出現しておらず,症例の蓄積が進んでいない。 一方で,TERT-PR Rearrangementの検出は,前回は腫瘍の新鮮組織と培養検体で行ったが,同一症例においてFFPEにてFISH法で検討を行ったところ,同様にBreak apartを検出することができ,より保管性に優れた検体で同様に検討可能であることは有用であった。 もう一つの予後決定因子としてMYCN遺伝子増幅について,腫瘍検体と血漿cfDNAでの増幅判定を引き続き施行しており,良好に両検体の結果は一致しており,血漿cfDNAにおけるMYCN遺伝子増幅の判定は高い信頼性があると考えられた。 一細胞解析システムについては,順調に実験が進んでおり,腫瘍細胞と血漿中から採取された一細胞腫瘍の遺伝子変異をそれぞれ次世代シーケンサーにて検討を行い,遠隔転移の原因となりうる腫瘍細胞のパラメーターを検討している。しかし,新たに検討した症例の中にはTERT再構成を認める症例は認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
症例を重ねて,TERT‐PR再構成を認める症例を蓄積して検討を行いたいが,再構成を認める症例は非常に稀であることが判ってきた。もう一つの予後規定因子であるMYCN増幅陽性症例は比較的頻度が高くあり,こちらについても次世代シーケンサーや一細胞解析システムを用いて,臨床情報と併せて神経芽腫の生物学的特性について検討を重ねていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
TERT再構成の症例を検索するために、過去10年分の検体で次世代シーケンサーを使用し、網羅的に検討してきたが、現状は2例から増えていない。もう少し過去の症例にさかのぼり検体数を増やして検討を行う。 コロナ禍により学会発表が滞っていたが、国際学会等での旅費として使用を行う。
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