研究課題/領域番号 |
20K08933
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
連 利博 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (20140444)
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研究分担者 |
家入 里志 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00363359)
齋藤 滋 富山大学, 大学本部, 学長 (30175351)
津田 さやか 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (60839075)
春松 敏夫 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (70614642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胆道閉鎖症 / 母親由来キメラ細胞 / 原因論 / 臍帯静脈血 / 混合リンパ球試験 |
研究実績の概要 |
胆道閉鎖症は新生児期から乳児期早期にかけて、肝内外胆管の閉塞に伴う黄疸、灰白色便、胆汁うっ滞に伴う肝障害を主症状として発症する。我が国では10000出生に1人、年間約100例が発症する。治療法としては肝門部肝空腸吻合術(葛西手術)が標準術式として確立されているが、減黄不良に伴う肝不全や、黄疸の改善後も進行する肝線維化、あるいは反復する胆管炎のため、思春期までに約半数が肝移植を必要とする難病である。 本研究では多施設共同研究により、Maternal Microchimerismと胆道閉鎖症の発症メカニズムとの関連を明らかにすることで、母親細胞との免疫と寛容のバランスを検索し、胎生期からの診断と予防方法の解明を目的とし、新たな治療法への架け橋となることを目指している。 臍帯血は生後の様々な抗原刺激を排除したBA患児の妊娠中に起こる免疫・寛容の現象に近い状況を再現するものであり、臍帯血での免疫担当細胞の分析はBA病因の本態に迫る研究となると考え、Maternal microchimerismと胆道閉鎖症の疾患メカニズムとの関連が明らかになれば、胎生期からの診断と予防方法の解明、また新たな治療の開発、ひいては肝移植に依らない自己肝生存率の改善に大いに寄与することが期待できる。 フローサイトメトリーの設定や放射線照射機器の故障などにより、開始が遅れていたが、BA患児末梢血中の母親由来細胞の定量および母親・BA患者間の混合リンパ球試験を開始することが出来ている。今年度はこれらの結果について臨床像や葛西手術時の肝生検検体とも照らし合わせ、母・患者間の末梢血リンパ球の免疫反応性を関連施設内での非BA同胞抗原に対する反応と比較することで、これらの免疫・寛容の状況と肝予後との関連を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、鹿児島大学および関連施設で葛西手術を行い外来経過観察中の胆道閉鎖症患者のうち、胆道閉鎖症に罹患していない同胞をもつ、2歳から10歳までの患者を選定し、患者/母親/同胞から採血を行っている。 非BA同胞を対照群として、母親から採取した末梢血よりFicoll比重遠心法(Lymphoprep)によりPBMCを分離し、BA患者および対照群のX線照射PBMCをstimulatorとして、またその逆方向での母児間リンパ球混合培養(MLR)を行い、ELISPOTアッセイで分析することを計画していたが、反応して増殖する細胞のPhenotypeが分析できたほうが良いことがわかり、現在CFSE-MLRという広島大学移植外科が開発した方法について指導をうけながら、移行しようとしている。 また、放射線照射機器の故障などにより、マイトマイシンCを使ったstimulator作成に移行しようとして予備実験が必要となっている。マンパワーのこともあり、2022年夏からは検査を再開できる予定である。 また、以上のことが順調に運べば、出生前診断された胆道閉鎖症患児の分娩時に臍帯血を供与いただき、同様の分析をする予定である。また、肝組織に母親由来キメラ細胞が存在していた場合、NIMA抗体を用いて母親由来キメラ細胞を磁気細胞分離装置(MACS)で分離し、CFSE-MLRで分析する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、症例数を増やすべく、全国規模での多施設共同研究へと対象を拡大する予定である。臍帯血採取についてはマニュアルを作成し、産科の協力を得て十分に周知徹底した上で、臨床の現場レベルで検体採取を開始できる準備が整った。 日本胆道閉鎖症研究会に臨床研究の申請を行い、全国の小児外科認定施設および教育関連施設からも検体の提供の協力を図り、本邦全土に渡る多施設共同研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の遷延により、共同研究施設との現場レベルでの連携がとりづらくなったことが主な原因であると考えられる。また、新型コロナ感染症の遷延により、学会への参加費の際の旅費が不要になったことも一つの要因として考えられる。 今後は、全国規模での多施設共同研究へと対象を拡大する予定であり、日本胆道閉鎖症研究会の協力を得ながら、全国の小児外科認定施設および教育関連施設からも検体の提供の協力を図り、本邦全土に渡る多施設共同研究を行う予定であり、それらの研究費用に使用する予定である。
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