研究課題
小児外科疾患である多発小腸閉鎖や中腸軸捻転、壊死性腸炎等により大量小腸切除を余儀なくされた短腸症候群患児らは、長期絶食下での完全静脈栄養(TPN)による術後管理を余儀なくされる。TPN管理下におかれた患児では腸管不全関連肝障害(IFALD)を高率に発症し、その管理が予後を左右することになるが、IFALDの発症のメカニズムに関しては全体像とその詳細が明らかになっていない。近年非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)においてオートファジーを抑制するRubiconがその発生機序に関係していることが報告され、新規治療法のターゲットとして注目されている。本研究では短腸症候群モデルラットを用いて、短腸症候群・長期絶食におけるIFALDの発症機序を明らかにするとともに、Rubiconのオートファジー制御に基づいたIFALDのメカニズム解明と克服的治療法を開発することを目的とした。本研究では、大量腸管切除の長期絶食・経静脈栄養モデルを作成し、PNALD/IFALDにおけるオートファジーの役割を検討し、新たな術後管理方法の確立に焦点を当てた。当科のIFALDモデルラットの作成および病理組織学的・生理学的検討により、肝臓への脂肪の沈着を確認した。オメガ6系脂肪酸、オメガ6:オメガ3=2:1のバランス脂肪製剤、オメガ3系脂肪酸の各投与群と非投与群ではrubicon発現量と脂肪沈着が正の相関を示した。オートファジー関連遺伝子を発現を調査したところ、rubicon発現量と負の相関を示した。IFALDではオートファジーは抑制されており、肝細胞の脂肪滴形成に関与していることが示唆された。今後はGLP-2やghrelinなどこれまで当科で研究してきた消化管ホルモンがrubiconにどのような作用をもたらすかを調査していく予定である。
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10.1016/j.jpedsurg.2022.02.030
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