研究課題
小腸移植の長期グラフト生存率(5年生存率約60%、10年生存率約40%)は不良である。成績不良の主因である拒絶反応の早期診断法として、採血でグラフト障害を判定する定量的バイオマーカーとしてドナー由来のcell free-DNA(以下cfDNA)を血中において測定し、臨床的拒絶反応の有無・程度との相関を観察する研究を行った。研究期間中に、5例の新規小腸移植とすでに小腸移植を受けられた方を含めて12例の対象患者さんに対して368サンプルを採取し、解析をおこなった。虚血再灌流障害の変化が鋭敏に捉えられ、急性期に発生した拒絶反応に相応してドナー由来cfDNAの上昇が確認され、治療に反応して臨床経過が改善すると、ドナー由来cfDNA値も低下した。ドナー由来cfDNAは有用なバイオマーカとなることが示唆された。非侵襲的な血液バイオマーカーであるドナー由来cell free DNAは、遺伝子の違いを逆手に取った移植臓器ならではの新しいバイオマーカーであり、本手法が確立することによって小腸移植のみならず、血液マーカーのない臓器移植(心臓・肺移植)においても現行のモニタリングに加えて新たな臨床情報をもたらすことが期待される。また、既存の血液マーカーが存在する臓器移植(肝臓・腎臓・膵臓)においても、拒絶反応診断においてddcfDNAは従来マーカーより鋭敏、かつ早期に検出することが期待され、主要臓器移植に共通する新たなバイオマーカー研究の発展につながることが期待される。
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小児外科
巻: 54 ページ: 1028-1031
巻: 54 ページ: 318-321
巻: 54 ページ: 280-284
https://www.hosp.keio.ac.jp/annai/shinryo/intestinal-care-and-rehabilitation-center/