研究課題
1型糖尿病 (以下、本症)患者に対する膵ランゲルハンス島 (以下、膵島)移植療法の実施例は増え続けているものの、ドナー数は移植を待ちわびる患者数においつかない、いわゆる 臓器不足 によりレシピエント候補の患者は移植の待機中に様々な合併症を発症し亡くなっている。臓器不足を解消する可能性の一つとして 「異種移植」 がある。2016年、異種移植を禁じていた我が国でも、厚生労働省が移植用動物の作成法、異種の細胞や臓器のヒトへの移植等を定めた指針を改定し、異種移植はいよいよ準備段階にきた。ヒトへの異種膵島移植の実現を目指すには、感染症法に基づく特定病原体が存在ないDesignated Pathogen- Free (DPF)ブタの作出と飼育が必須である。そして、本ブタから安全に、安定的に機能する膵島が確保され、適正に移植されなくてはならない。本研究ではDPFブタの作出と飼育、DPFブタからの適切な膵島分離時期の同定、膵島の分離法の確立、そして、DPFブタからの膵島分離における標準業務手順書 (standard operating procedure: SOP)の作成に加え、分離した膵島はバイオ人工膵臓 (Bioartificial pancreas (BAP))とし、申請者らが作出したヒト型糖尿病ミニブタに鏡視下手術にて移植、移植後の膵島の鏡視下による追跡から移植に最適な部位の探索と移植後の膵島の機能評価を目的としている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は1. DPFブタの作出と、2. DPFブタからの最適な膵島の分離時期の同定をおこなった。1. DPFブタの作出: DPFブタはUterectomy- isolated Rearing (U- iR法)により作出した。U-iR 法は、妊娠末期のマイクロミニブタに対し、a. 子宮全摘出術、b. 無菌アイソレーター内による胎児の蘇生、c. 幼若ブタの人工哺育、と3つの行程により確立した。本ブタの飼育では、1週間ごとの検査でもブタは無菌状態が保たれていること、アイソレーター内での組織の採材も可能であった。2. DPFブタからの最適な膵島の分離時期の同定:現在、世界で行われている本症の患者に対する異種膵島移植の臨床試験では幼若ブタが用いられているが、「どの週齢の幼若ブタが最も移植に適した膵島か?」 を明確にした検討は少なく、本研究では幼若、若年ブタから適正な膵島の分離時期の同定を試みた。現在、同定した時期から実際に膵島分離を実施、in vitroにおける膵島の機能評価を行い、膵島分離の適正な時期を確定させる試みを行っている。
本年度からは分離した各年齢の膵島のin vitroにおける機能評価を行い、膵島分離の適正な時期を確定させる。確定し次第、機能的な膵島を安定的に確保するためのSOPの作成する。これらの検証と並行し異種移植評価に必要なレシピエントの準備する。ブタは種の相違、血液型不適合、ブタの主要組織適合性遺伝子複合体 (Major Histocompatibility Complex)であるSwine Leukocyte Antigen (SLA)の3つにおいて確実にミスマッチとなる “ヒト型糖尿病ミニブタ”を準備する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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