研究課題/領域番号 |
20K08946
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
田中 水緒 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (60565232)
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研究分担者 |
永原 則之 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10208043)
田中 祐吉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 臨床研究所長 (50420691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小児呼吸器腫瘍 / 先天性嚢胞性肺疾患 / 次世代シーケンサー / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
小児呼吸器腫瘍は肺の発生異常が背景にあることや、喫煙を含む環境要因の程度が低いことなど成人の肺癌とは異なる病因で発症することが多い。腫瘍の種類も小児や若年に特有のものがあり、腫瘍の診断・治療には成人とは異なるアプローチが必要である。本研究では、小児呼吸器腫瘍の分子生物学的背景を明らかにすることで、病態を解明しその中から特異性の高い診断マーカーの同定を行うことを目的とする。具体的には、次世代シーケンサーおよびプロテオーム解析を用いて、新生児期・小児期にみられる呼吸器腫瘍およびその前病変の細胞遺伝学的背景を解明および診断マーカーの確立を試みる。 本年は予備検討として、当施設の病理アーカイブより分子生物学的背景が明らかにされていない小児肺腫瘍を抽出し、次世代シーケンサーを用いてRNAシーケンスを行い新規転写産物や遺伝子変異の網羅的探索を開始した。その中で腫瘍発生に関わることが予想される新規遺伝子異常も認めた。さらに当施設病理アーカイブより先天性嚢胞性肺疾患の抽出を行い、組織学的レビューを開始した。 また、先天性嚢胞性肺疾患の総論を2編執筆した。先天性嚢胞性肺疾患の一部は腫瘍発生の母地となることが知られているが、原因遺伝子については十分解明されていない。先天性疾患の診断に関与する周産期医療に携わる医療従事者に対して、腫瘍発生の可能性について周知を図るとともに、慎重な診断を促す効果があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験として、当科アーカイブより小児呼吸器腫瘍を抽出し、腫瘍発生に関わる遺伝子異常が不明なもの5例を対象とした。3例について次世代シーケンサーを用いてRNAシーケンスを行い、2例で融合遺伝子を検出し、1例は報告例のない遺伝子異常であったため論文作成の準備中である。1例は結果解析中である。1例は検体不適当で検査不能であり、1例は検査準備中である。 また、当科アーカイブより先天性嚢胞性肺疾患は123例抽出された。現在組織像の再検討を行っており、網羅的遺伝子検索の対象症例の選択作業に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍発生に関わる遺伝子異常についての研究は近年の急速な進歩がみられる一方、小児の呼吸器腫瘍はその希少性から新規発見の方向はほとんど見られないのが現状である。 当科のアーカイブを用いた、次世代シーケンサーの予備実験を開始しており、一部論文発表に値する結果が得られている。対象症例を拡大して検討を進める予定である。プロテオーム解析については対象症例を選択から着手する。 また、症例集積のため当科アーカイブの症例に加えて希少疾患については国内他施設の協力が望ましく、小児病理・小児外科のネットワークを活用して協力機関を募ることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型肺炎拡大のため、一部の試薬、実験器具の入手の遅延が生じ、また共同研究者とのミーティングの延期や研究会・学会の中止があり、申請時に予定していた研究予定の一部が先送りとなったため、次年度使用額が生じた。 次年度以降、実験に必要な試薬の購入に加えて、検体の郵送費・検討結果の国内外での発表に対して研究費の使用を予定している。
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