研究実績の概要 |
これまで我々は、乳癌組織においてはFDG-PETに応用される糖代謝のみならず、糖代謝に依存しない癌特異的代謝経路が亢進されていることを明らかにし、代謝リプログラミングと薬剤抵抗性について研究を行ってきた 。なかでも、アミノ酸代謝とその輸送に関わるトランスポーター(L-type amino acid transporter, LAT1)の発現は、他の癌種でも予後不良因子として報告されているため、LAT1を中心に研究を進めた。 2023年度は、乳癌と同様に術前化学療法がひろく行われている食道癌におけるLAT発現と薬剤耐性について検討を行った。免疫組織学的検討では、LAT1高発現群において術前化学療法に対する組織学的治療効果は有意に乏しく、長期予後も不良であった。その他臨床病理学的因子とも相関が見られた。また、in vitroでの実験も行い、食道扁平上皮癌細胞株(KYSE150, KYSE220, KYSE520, TE5)におけるLAT1の発現をSimple westernにて確認した。さらに、cisplatinへの感受性が最も低い、KYSE520ではLAT1阻害薬に高い感受性を示すことがわかった。 上記に加え、酸化的リン酸化を中心としたエネルギー代謝を司るミトコンドリアの機能にも着目し、にゅ癌におけるミトコンドリアダイナミクスと薬剤耐性との関連性についても検討を行った。その結果、トリプルネガティブ乳癌においては、DRP1を介したミトコンドリア分裂とミトファジーによるミトコンドリア代謝の変化が薬剤耐性に関わることが明らかとなり、として論文(「Mitochondrial dynamics as a novel treatment strategy for triple-negative breast cancer」,Cancer Med)として発表した。
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