甲状腺未分化癌は希少であるが極めて予後不良で治療困難な癌であり、新規治療の登場が期待され、他の癌種同様に免疫チェックポイント阻害療法の効果が注目されている。本研究では甲状腺未分化癌のシングルセル網羅的遺伝子解析を行い、甲状腺未分化癌の癌微小環境を構築する免疫細胞群の特徴を解析することにより新規癌免疫療法の標的を探索する。また甲状腺未分化癌は分化型乳頭癌・濾胞癌から未分化転化して発生するといわれており、シングルセル網羅的遺伝子解析を生かして甲状腺癌の未分化転化に関与する遺伝子の探索を行うことにより、未分化転化の機序を明らかにすることを目的とする。 本研究では甲状腺未分化癌、低分化癌、分化癌(乳頭癌、濾胞癌)の手術検体から新鮮組織サンプルを採取し、シングルセル化の至適条件検討の後にシングルセル化・保存を行い、うち8サンプルのシングルセルRNAシークエンスを行った。現在、バイオインフォマティクス解析にて各種手法での解析を行っている。また各サンプルに対し、甲状腺癌で腫瘍の発生やプログレッションに関与するといわれているドライバー遺伝子のBRAF V600E、TERTプロモーターなどの遺伝子変異の発現検索を行い、組織型、進行度、予後などの臨床データとシングルセル解析の結果とともに相関を解析している。 さらに我々の研究グループはこれまでの研究で可溶型CD155が新規免疫チェックポイント分子として治療標的となる知見を得ている。ヒトと異なりマウスではCD155に可溶型のバリアントがないため、可溶型CD155強制発現マウスを作製し、可溶型CD155抗体治療モデルを樹立して解析を行っている。今後、甲状腺癌モデルにて可溶型CD155抗体治療の解析を行う予定である。
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