研究実績の概要 |
本研究では膵頭十二指腸切除術後の感染性合併症に与える体組成の影響を検討し、用いた変数と設定したcut offの妥当性をブートストラップ法により検証すると共に、オステオポンチンの関連を臨床的に解明することを目的とする. 当施設にて膵頭十二指腸切除術を施行した440例の患者の術前腹部CT画像を解析し,第3腰椎レベルにおける骨格筋指数skeletal muscle index (SMI)、内臓脂肪量visceral fat area (VFA)、皮下脂肪量subcutaneous fat area (SFA)を測定した。それぞれのcut offは感染性合併症に対するROC曲線より求め、PD後の感染性合併症に及ぼす独立した危険因子をロジスティック回帰分析により求めた。また、求められた危険因子を用いて感染性合併症の予測モデルを作成し、予測性能の検証を行った。またIL-6, TNF-α, オステオポンチンを測定しそれらの関連を検討した。 単変量、多変量解析の結果、胆管癌(OR:2.25, p=0.038), 術前immunonutrition未施行(OR:2.43, p<0.001)、膵性状soft(OR:2.15, p=0.003)、SMI低値(OR:4.20, p<0.001, cut off (cm2/m2):男=44.63, 女=34.12)、VFA高値(OR:2.65, p=0.001, cut off (cm2):男=85.89, 女=36.7)であることが膵頭十二指腸切除後の感染性合併症に対する独立した危険因子として抽出された。続いて、上記5因子を用いた感染性合併症の予測モデルは、ブートストラップ法による検証により良好な予測性能であることが示された(C index:0.771, 95%CI: 0.767-0.775)。血漿オステオポンチンは合併症の有無に関連を認めなかった。
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