研究実績の概要 |
甲状腺未分化癌と分化癌の網羅的遺伝子発現解析の結果から、EpCAM (Epithelial cell adhesion molecule)に着目し、EpCAMの機能解析を行い、これまでに以下の結果を得ている。 (1) 甲状腺分化癌細胞株4種(TPC-1, KTC-1, FTC-133, WRO)、未分化癌細胞株4種(FRO, ACT-1, OCUT1F, OCUT3)で、EpCAMの発現を解析したところ、未分化癌細胞株FROとACT-1でEpCAMの著明な発現増加が認められた。これらの細胞では、claudin7、Srcのリン酸化、Eカドヘリンの発現増加が共通して認められた。 (2) FROとACT-1でsiRNAを用いてEpCAM発現を抑制すると、細胞増殖が有意に抑制された。EpCAM発現の増加が認められない分化癌細胞株(TPC-1, FTC-133)とFRO, ACT-1で、siRNAを用いてEpCAMを抑制し、コロニー形成能を比較すると、分化癌細胞株では形成されるコロニー数に変化は認められなかったが、FRO, ACT-1ではコロニー数の有意な減少を認めた。 (3) Scratch法で測定される細胞遊走能は、FRO, ACT-1ともに、EpCAMを抑制すると有意に低下した。 (4) EpCAMを抑制した場合のマトリゲルへの接着能は、TPC-1, FTC-133に比べ、FRO, ACT-1では有意に低下していた。 これらの結果から、EpCAMが未分化癌細胞の増殖、遊走および浸潤に関与していると考えられた。
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