研究実績の概要 |
甲状腺未分化癌と分化癌の網羅的遺伝子発現解析の結果から、EpCAM (Epithelial cell adhesion molecule)に着目し、EpCAMの機能解析をin vitroとin vivoの実験系を用いて行い、これまでに以下の結果を得ている。(1)甲状腺未分化癌(Anaplastic thyroid cancer; ATC)細胞においてEpCAMをノックダウンすると、細胞の増殖、移動、浸潤が抑制され、マトリゲルへの細胞接着が阻害された。(2)細胞骨格をアクチン免疫染色で評価すると、EpCAMのサイレンシングにより、ATC細胞の仮足形成が著明に阻害された。EpCAMが癌細胞骨格の変化を介して浸潤に関与している可能性が推測された。(3)マウス尾静脈からATC細胞を注入したマウス肺転移モデルでの解析で、EpCAMのサイレンシングは肺転移を有意に抑制した。(4)ATC細胞でEpCAMをノックダウンすると、悪性度の高い低分化な表現型から、比較的穏やかな分化型表現型への再分化が誘導された。以上の結果から、EpCAMが甲状腺未分化癌の悪性度の高い表現型と脱分化に関与しており、極めて悪性度の高い本腫瘍の治療標的分子になる可能性が示唆され、現在、論文発表準備を進めている。 さらに、未分化癌に対する新規治療戦略を開発するために、本邦で未分化癌に適応を有する多標的チロシンキナーゼ阻害薬(MKI)であるレンバチニブの、未分化癌由来細胞株FROに対する感受性を解析し、レンバチニブとEGFR阻害剤の併用が、新規治療戦略になる可能性が考えられる結果を得て、結果を論文として発表した(Cancer science. 113(9); 3193-3210, 2022)。
|