研究課題/領域番号 |
20K08954
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
二村 学 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10415515)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Mieap / ミトコンドリア / Warburg効果 |
研究実績の概要 |
我々のグループの報告したp53標的遺伝子Mieap(Mitochondria eating protein)は、不良ミトコンドリアを排除・修復することでATP産性能を改善し、ROS発生抑止機能を持つことが示されている。更に、Mieapのヒト癌における異常や腫瘍増殖抑制メカニズムを検討し、乳癌・消化器癌でのp53-Mieap-BNIP3/NIX経路により制御されるミトコンドリア品質管理経路の破綻を明らかにした。本研究の究極の目標は、癌細胞の不良ミトコンドリア由来のROSを標的とした新規がんの悪性度診断マーカーの開発、ならびに革新的癌治療法を開発することである。そのために本研究は以下の点に注目して研究を継続している。現在までに、 (1)Mieap導入発現に伴う細胞内代謝産物と遺伝子発現変化の網羅的解析を行った。Mieap感受性並びに抵抗性細胞にMieapを導入することで変動する遺伝子群、代謝物群をスクリーニングし、がん代謝に関係の深い遺伝子との関係を明らかにした。(2)世界的な乳癌に関する大規模データベースから、遺伝子発現(今回はMieap, およびミトコンドリア代謝に関する因子に注目)の臨床的意義を明らかにした。(3)前述のデータに対してヒト臨床検体を用いて、ミトコンドリアの機能異常を反映すWarburg効果に関係する遺伝子群の異常を検出した(今後論文、学会発表を控えている)これらの結果から、MieapはWarburg効果に関係する遺伝子と密接な関係があることも明らかになってきた。これらの因子との関連を精査することで、Mieapのさらなる、機能並びに制御機構が明らかとなりがん代謝からアプローチする制御機構の解明、創薬の開発につなげて行く予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.世界的な2つの乳癌遺伝子発現データベースを活用し、Mieapの乳癌における臨床的意義、特に予後との関連を検索した所、Mieapの高発現群は低発現群と比較して有意に予後良好であった。とくに、Luminalタイプにおける傾向は顕著であった。Mieap発現腫瘍は、細胞周期関連あるいは細胞分裂に関する遺伝子発現が有意に抑制されており、Mieapによって腫瘍増殖、細胞分裂が制御されている可能性が示された。 2.乳癌細胞株を用いて、Mieap強制発現にを行い細胞内の変化(遺伝子発現変化、代謝産物の変化)について、現在メタボロームを行い、数理アルゴリズムを用いた解析を行った。。 TCGA,METABRICといった大規模Public dataとの関係を検討し、Warburg効果の原因遺伝子との関連が示され現在解析を進めている。 3.乳癌手術検体を用いて、Warburg効果関連遺伝子と、Mieap発現との関連を現在解析している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Mieap導入によって細胞内遺伝子発現、代謝産物の比較検討データの解析を進める。Warburg効果関連遺伝子との関連を現在改正中である。 (2)Large Cohort dataの解析を進め、臨床上有用であるがん代謝関連遺伝子との関連を検討し、臨床検体での検証、細胞での確認実験を進め、がんの悪性化診断につながるマーカーの開発につなげる。
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