研究課題
本研究では腫瘍微小環境構築のkey regulatorである腫瘍関連マクロファージ(TAM)に着目し、Cancer cell-TAM interactionやTAMを介して誘導される癌関連線維芽細胞(CAF)・免疫逃避機構の機序解明を目的とする。まず、マクロファージを、Cancer-CM(conditioned medium)・CAF-CM・TAM-CMで培養し、TAM1 (Ca.)・TAM2 (CAF)・TAM3 (TAM)を作成したところ、TAM1 (Ca.)・TAM2 (CAF)・TAM3 (TAM)のCD163・CD204はTAM1 (Ca.)・TAM2 (CAF)で上昇し、IL-6はTAM3 (TAM)のみで上昇していたことから、TAM自身のTAM誘導能はないことが証明された。TAM1 (Ca.)-CM・TAM2 (CAF)-CMはM0マクロファージ-CMより、腫瘍増殖能・浸潤能とも増強し、特に TAM2 (CAF)-CMは他のCMと比較し、PAI-1分泌能が増強していた。TiplaxtininによるPAI-1阻害は、TAM2 (CAF)-CMでのみ、腫瘍増殖能・浸潤能を低下した。CAF-CMのみのPAI-1産生性TAM誘導の要因についは、CAF-CMでのみでCXCL12が高濃度で、CAF-CMに対するCXCL12抗体追加が、TAM2 (CAF)の特徴的機能であるPAI-1分泌能が低下させることを確認している。さらに、線維芽細胞も同様の手法でCAF1 (Ca.)・CAF2 (TAM)・CAF3 (CAF)を作成した。CAF1 (Ca.)-CM・CAF2 (TAM)-CM・CAF3 (CAF)-CMは正常線維芽細胞(Lx2)-CMより腫瘍増殖能・浸潤能とも増強し、特に CAF2 (TAM)-CMは他のCMと比較し、osteopontin分泌能が増強していた。
2: おおむね順調に進展している
上記実験系において腫瘍微小環境におけるTAM誘導の可能性とともに、CAFにより誘導されたTAMやTAMにより誘導されたCAFの機能的特徴について確認できた。特にCAF誘導TAMはPAI-1分泌能が増強し、TAM誘導CAFはosteopontin誘導が増強しており、微小環境における悪性度獲得機序の一因と考えられる。今後、他のサイトカインの関与や、腫瘍悪性度に対する影響について検討を加えていく予定としている。
令和3年度は、腫瘍微小環境におけるTAMからCAF、CAFからTAMに表されるTAM-CAF interactionの意義について検討を進めた。今後は、サイトカインのみならず、コンディションメディウム内のエクソソームについても検討を加えるとともに、そこから展開される腫瘍免疫逃避機構や、微小環境内の各種構成細胞間のinteractionについても解析していく予定である。
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