研究課題/領域番号 |
20K08959
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高田 泰次 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10272197)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カダバーサージカルトレーニング / 臓器灌流 / Thiel法 |
研究実績の概要 |
これまで愛媛大学で行われているご遺体を用いた手術研修では、手術手技研修に適すると判断されたご遺体が搬入されたとき、大腿静脈でルートを確保し、Thiel固定液をおよそ10L自然滴下することで固定を行ってきた。本固定方法では、組織を柔らかく保つことができるため、四肢を利用するような整形外科領域等の手術研修には非常に有用である。一方で、消化器外科領域の手術研修における腹部内臓については、特に肝臓,膵臓,胆道,脾臓などは固定が不十分であり、被膜下組織が融解していることもしばしば見られる。 本研究は消化器外科手術研修のために、最も適した腹部内臓の固定方法を開発することを目的とする。固定液の種類・注入法を工夫することで、腹部内臓を手術手技研修に最も適した固定状態とすることを目指すものである。 しかし、昨年度は新型コロナウィルス感染拡大のため、研究活動が制限され、新しく提供いただいたご遺体の最初の固定段階での研究ができなかった。そのため、代わりに、ご遺体を用いて臓器移植の際のドナーの臓器摘出手技の研修を行い、その際に大動脈から保存液を流すことによる腹部臓器の灌流状態の観察を行った。例えば肝臓に関しては、大動脈だけでなく門脈からの灌流を追加することにより、wash-outがより完全に行えることが確認された。このことから、最初の固定の段階において、Thiel固定液を注入する経路を大腿動脈からとし、同時に大腿静脈から脱血を行うことにより固定液が体内に広く行き渡ると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は新型コロナウィルス感染拡大のため、研究活動が制限され、新しく提供いただいたご遺体の最初の固定段階での研究に着手することができなかった。そのため、代わりに、ご遺体を用いて臓器移植の際のドナーの臓器摘出手技の研修を行い、その際に大動脈から保存液を流すことによる腹部臓器の灌流状態の観察を行った。例えば肝臓に関しては、大動脈だけでなく門脈からの灌流を追加することにより、wash-outがより完全に行えることが確認された。このことから、最初の固定の段階において、Thiel固定液を注入する経路を大腿動脈からとし、同時に大腿静脈から脱血を行うことにより固定液が体内に広く行き渡ると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の具体的な研究方法は以下の通りである。 1.提供いただいたご遺体の最初の固定段階での固定灌流方法として次の3種類を試みる。 1)現状の方法で,大腿静脈からThiel固定液を10L注入する。 2)Thiel固定液を注入する経路を大腿動脈からとし、同時に大腿静脈から脱血を行う。脳死移植での保存液による臓器潅流でもこの脱血操作が不可欠であり、ご遺体の灌流でも脱血により固定液が体内に広く行き渡ると予想される。 3)主に肝臓の固定状態をさらに改善するため、上記2)に加えて小開腹により腸間膜静脈からカテーテルを挿入し、門脈内にThiel固定液を1L注入する。 2.次に固定液として、飽和食塩溶液を用いて上記2)および3)の経路で灌流固定する。飽和食塩溶液固定では血管内に固定液がとどまり血管の張りが保たれるとされており、手術操作の際の血管の同定や血管周囲の剥離、処理などがより生体に近い状況で行える可能性がある。Thiel法と比較してこのような利点があるかどうかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により研究活動が制限されたため、予定していた通りには研究が進まなかった。
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