研究課題/領域番号 |
20K08960
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 博喜 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30448550)
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研究分担者 |
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / オミックス解析 / 進化解析 / 癌代謝 / BCAA |
研究実績の概要 |
我々は2014年10月から2016年5月の間に根治切除を行った10症例から検体を収集した。それぞれの症例から3-9ヶ所のMultiregional analysisを行い、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子変異解析を行い腫瘍内不均一性を評価しクローン進化の過程を調べた。さらにトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、メタボローム解析を追加することでオミックス解析を行った。まず、遺伝子解析にて進化系統樹を描くことでその進化形態が中立進化型であることを確認した。そこで、症例間のdriver遺伝子の多様性があるにも関わらず、普遍的な癌特有な代謝経路がある可能性に注目した。 次にiMPAQT法を用いて癌細胞の増殖や生存を有利にしている可能性がある主要な代謝経路に関わるタンパク342種類を定量した。また同部位近傍から検体を採取して、512種の主要な代謝産物を測定した。タンパク定量結果を用いて、pathway解析を行い、この癌腫においてもっとも重要な代謝pathwayを検索し、Valin-Leucine-Isoleucine degradation pathwayの濃縮を大半の症例で認めた。このpathwayの代謝酵素が非癌部と比較し低発現していた。また代謝物定量結果からValin、Leucine、Isoleucine (分岐鎖アミノ酸: BCAA)は腫瘍部において有意に高値を示した。さらに免疫染色では癌部でpmTOR/pS6Kの濃染を認めた。 近年の研究で他癌種にてBCAAが癌の代謝で重要であることが明らかになっている。我々は肝内胆管癌において、Valin-Leucine-Isoleucine degradation pathwayが不活性化し、BCAAが蓄積されており、さらにmTOR pathwayが活性化していることを確認した。またBCAAの分解が不活性化している群は予後不良であるという特徴があることまで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BCAA蓄積を惹起する機構としてmTORが真に関係するか否かを検証するために、肝内胆管がん株化細胞でまず、BCAAの蓄積が細胞にどのような変化を与えるのかを実験中である。
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今後の研究の推進方策 |
mTORについてCRISPR/cas9の系でmTOR KO肝内胆管がん株化細胞を作製し、in vitro/in vivo解析により抗腫瘍効果、RNAプロファイルおよび代謝産物プロファイルの再現性を確認する。ヌードマウスを用いてmTOR阻害剤の投与により肝内胆管がんに対して抗腫瘍効果を示すか否か、さらにBCAA蓄積の変化も明らかにする。肝内胆管がん症例の別コホートを集積して、mTOR発現とBCAAを抽出しデータの再現性を確認する。既存の多層オミックスデー タの解析によりmTOR以外のBCAA活性化に関与しうる 機構を明らかにする。BCAA活性促進の新規標的分子についてKOまたは強制発現した肝内 胆管がん株化細胞を作製しin vitro in vivo解析により、phenotypeの変化、 RNAプロファイルおよび代謝産物プロファイルの再現性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に実験消耗品として使用予定。
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