研究課題/領域番号 |
20K08960
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 博喜 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30448550)
|
研究分担者 |
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90542118)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | BCAA / BCAT1 / mTOR / オミックス解析 |
研究実績の概要 |
肝内胆管がんは難治がんの一つであり治療成績の改善には従来とは異なるアプローチが求められている。われわれは肝内胆管がんにおいて症例間多様性を凌駕して普遍的に存在し腫瘍内多様性もないクローナルな治療標的分子または機構について多層オミックス解析(ゲノム/転写産物/蛋白/代謝産物)にて探索した結果、全症例間において普遍的なゲノム変異や発現遺伝子はなく系統樹も多様であった。しかし非癌部に比べて癌部における分子鎖アミノ酸(BCAA)活性は多くの症例で普遍的に認めた。本研究ではBCAA蓄積およびmTOR活性化を治療標的機構として捉えた。 今回われわれはBCAAが肝内胆管がんにおいてmTORシグナルを介した細胞増殖や浸潤促進を検証するために、ヒト肝内胆管がん細胞株(SSP-25、RBE、HCCC-9810)におけるBCAAの主要触媒酵素であるBCAT1およびBCAT2発現を正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)における発現と比較検討した。その結果、肝内胆管がん細胞ではBCAT1およびBCAT2の発現がNHDF細胞と比較して高い発現を示していた。また、肝内胆管がんではBCAAはmTORシグナルを上方制御していた。SSP-25 細胞および HCCC-9810 細胞では、BCAA 存在下においてmTORおよびmTOR経路の下流のS6K,S6,4EBP-1 などのタンパク質のリン酸化が増加し細胞増殖や浸潤をきたしていた。さらに、BCAT1/BCAT2のKDにより、mTORシグナルの下方制御および細胞増殖の低下が見られたことから、BCAA活性化環境において肝内胆管がん細胞ではBCAT1およびBCAT2発現によりmTORシグナルが活性化することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BCAAの活性化 あるいはBCAA活性環境下におけるBCAT1/BCAT2の活性化およびmTOR活性化など、これまでのin silico解析の結果が 予定通り、in vitro およびin vivoにて証明されつつある。しかし、当初計画した『別コホートによる再現性の確認』『BCAA活性化に関与するmTOR以外の新たな治療標的(変異)分子の同定』についてはこれからの課題であるためやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
1)すでにCRISPR/cas9の系でmTOR KO肝内胆管がん株化細胞を作製しており、特にヌードマウスを用いて既存のmTOR阻害剤everolimus投与により肝内胆管がんに対して抗腫瘍効果を示すか? BCAA蓄積の変化も明らかにする。さらに新規創薬として九州大学生体防御医学研究所 主幹教授 中山敬一先生の有するLIGHTHOUSEを活用して新たな治療の化合物を同定する。 2)肝内胆管がん症例の別コホートを集積して、mTOR発現とBCAAを抽出しデータの再現性を確認する。 3)BCAA活性化に関与するmTOR以外の新たな治療標的(変異)分子の同定のため、既存の多層オミックスデータの解析によりmTOR以外のBCAA活性化に関与しうる機構を明らかにする。新たに同定するBCAA活性促進の新規標的(変異)分子についてKOまたは強制発現した肝内胆管がん株化細胞を作製しin vitro in vivo解析により、phenotypeの変化、RNAプロファイルおよび代謝産物プロファイルの再現性を確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験消耗品に充当予定。
|