研究課題/領域番号 |
20K08961
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
福田 正裕 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 客員助教 (60802113)
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研究分担者 |
石本 崇胤 熊本大学, 病院, 特任准教授 (00594889)
三宅 慧輔 熊本大学, 病院, リサーチ・スペシャリスト (10814759)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腫瘍微小環境 / 胃癌 / C AFs / 自律神経 / 生体イメージング |
研究実績の概要 |
固形癌は癌細胞のみで構成されるものではなく、腫瘍微小環境としてfibroblastや浸潤macrophageなど多彩な細胞分画を含んでいる。なかでもCAFs (Cancer-Associated Fibroblasts)が癌の進展や浸潤・転移を促進しており、中でもびまん性胃癌はCAFsなどのストローマとの相互作用が強いために腹膜播種や癌性リンパ管症、骨転移などの切除不能な転移を引き起こしやすい事が知られている。一方、癌組織中に神経組織が存在することは1925年にはすでに報告されており、交感神経・副交感神経終末が見つかっている。多くの研究で交感神経活動が腫瘍組織の増大・転移に寄与し、副交感神経活動が抑制的に働くことが報告されているが、それらの自律神経系のターゲットおよび自律神経活動が、腫瘍組織中の癌細胞あるいはストローマを構成するCAFsに対してどのように影響を与えるのかについては未知のままである。 胃は管腔臓器であると同時に遊離臓器であるため、実質臓器と比べ生体イメージングが難しく、2光子顕微鏡を用いたin vivo観察の論文はほとんど存在しない。胃癌細胞を皮下に移植することで経時的観察は可能であるが、背景組織が胃ではないため病態生理には違いがあると考えられる。本研究の目的は、2光子顕微鏡を用いたsubcellular resolution イメージングによって、自律神経系、癌細胞およびCAFs間の相互作用を観察し、それらの相互作用がどのように癌の浸潤・転移に寄与するのかを明らかにすることである。 我々は胃において胃癌およびCAFsをストローマを経時的に観察可能な実験系を確立した。また胃癌に侵入している神経細胞特異的に蛍光ラベルし観察可能とすることに成功した。得られる我々の研究成果によって、生体イメージングとがん研究を融合した新しい知見をもたらしうると考えられる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
■胃癌およびCAFsのchronic in vivo 観察モデルの確立 申請書提出時点では、赤色蛍光タンパクを発現するよう遺伝子改変したヒト胃癌細胞および緑色蛍光タンパクを発現するマウス線維芽細胞をマウス胃へ移植し、腫瘍増大後再び開腹しイメージングを行っていた。しかしこの手法は、全ての線維芽細胞が蛍光を発現しているわけではないため、視野内にありながら観察できないCAFsが存在するという問題を抱えていた。そこで我々は、線維芽細胞特異的に赤色蛍光タンパクを発現する遺伝子組み換えマウスを作成し、そのマウスに緑色蛍光タンパクを発現する胃癌細胞を移植するモデルを確立した。 ■癌組織内の自律神経とCAFsおよび癌細胞との相互作用の可視化 癌組織内に侵入した自律神経を可視化するためには、蛍光タンパクを導入する必要がある。我々は先行研究(Kamiya, A. et al. Nat Neurosci. 2019 Aug;22(8):1289-1305.)に基づき、Adeno-associated virus (AAV)を腫瘍に注入することで神経末端からAAVが取り込まれ、神経細胞に蛍光タンパクを十分量発現させることが出来ることを確認した。これにより、自律神経にカルシウム指示蛍光タンパク(GECI)を発現させることが出来るため、自律神経の活動および形態を同時に可視化可能である。
今後はこれらを用いて実験を進めてゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在は実験準備が完了し、データを収集中である 。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費と人件費について、当初予想していた支出が生じなかった。次年度で合算して使用できる見込み。
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