研究課題/領域番号 |
20K08967
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
篠田 昌宏 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学三田病院, 教授 (50286499)
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研究分担者 |
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (00192500)
日比 泰造 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (10338072)
山田 洋平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383816)
河地 茂行 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80234079)
高原 武志 岩手医科大学, 医学部, 講師 (80453306)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝移植 / 拒絶反応 / 早期診断 |
研究実績の概要 |
共同研究施設(慶應義塾大学、熊本大学、岩手医科大学、東京医科大学八王子医療センター、国立遺伝学研究所)と連携を開始し、検体収取、測定の体制を構築し、実際に研究を開始している。ddcfDNA測定は、国内の人類遺伝学の第一人者である国立遺伝学研究所の井ノ上らが担当している。令和2年度は約40例の検体を収集し、ddcfDNAの測定を行った。一部の症例で、肝障害とddcfDNAの相関を示唆するデータが得られている。今後ACR等のイベントを予知するか否かの検討をすべく検体収集、測定を継続していく。 欧米では様々な臓器移植においてddcfDNAの意義に関する研究がなされており、ddcfDNAと各臓器の拒絶反応の相関は、心臓移植(感度58-83%・得意度84-93%)、肺移植(感度100%・得意度73%)、腎臓移植(感度59-81%・得意度83-85%)と報告されている。肝臓移植においては2017年ドイツにおける多施設共同研究の結果、従来の採血による肝機能測定よりも早期かつ高い感度で急性拒絶反応を検出することが示唆されている(Schutz E, et al. PLoS Med 2017;14(4):e1002286.)が令和2年度も世界から新たな知見は発表されていない。本研究で新知見の獲得を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに倫理申請を終え、国際医療福祉大学、慶應義塾大学、国立遺伝学研究所を中心に研究が開始されている。令和2年度は約40例の検体を収集し、ddcfDNAの測定を行った。一部の症例で、肝障害とddcfDNAの相関を示唆するデータが得られている。 関連施設で定期的にwebカンファレンスを行い、積極的な検体収集を進めていく。リキッドバイオプシー技術は、「早期診断」「正確性」「低侵襲性」を兼ね備えた新しい技術として注目されている。臓器移植における本法は、ドナーとレシピエントの遺伝子の違いに着目したもので、腎移植での研究が先行するが、心、肺、肝の各移植での知見は未だ少ない。肝移植で得られた上記知見は拒絶反応という病態ではなかったが、拒絶反応時の早期診断に期待を持たせる結果だった。実用化した際には不要な肝生検を回避でき臨床的意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も検体収集を続け、適宜cfDNAの測定をしていく。患者に拒絶反応が発生しなければ、拒絶を早期診断できるかの検討が出来ず、拒絶反応症例を待つことになる。以下の方法はこれまで通り行う。 ・採血方法:必要採血量は5ml。専用容器(VeritasのCell-Free BCTチ ューブ)に血清を保存し、DNA測定まで暗所冷保存する。急性期症例は、術前、0-14病日(連日)、15-30病日は週2回、1-6か月は月1回、以後は3か月に1回。慢性期症例は、免疫抑制剤減量前に1回、以後毎週1回免疫抑制剤の減量完了まで検体収集する。 ・慢性期における免疫抑制剤減量方法:カルシニューリン阻害剤は初回に投与量を2/3もしくは1/2に減量、肝逸脱酵素の上昇がなければ数週間後にさらに2/3から1/2に減量する。代謝拮抗薬は初回に投与量を1/2か完全に中止。ステロイドは、投与期間や用量に応じて漸減していく。 ・肝生検の実施基準:急性期症例は、他の原因で説明できない肝逸脱酵素上昇を認めた場合に実施。慢性期症例は、免疫抑制剤を減量する場合は事前に原則実施し、減量中に肝逸脱酵素上昇を認めた場合は必ず実施する。 研究成果は、研究グループ内で定期的にカンファレンスを行い検討を重ねていく。学会としては、日本移植学会、日本肝移植学会、日本外科学会、日本消化器外科学会、International Liver Transplantation Society等で発表していく。英文論文は、Transplantation、Liver Transplantation、Hepatologyなどの英文誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会、研究会へ出席し情報交換をする予定や、共同研究者が集合してカンファレンスをする予定がコロナ禍でほぼすべて中止、延期となり旅費がかからなかった。また、研究会で予定していた講演も実施しなかったため謝金が発生しなかった。予定した人件費がかからなかった。
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