研究課題/領域番号 |
20K08969
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中村 道郎 東海大学, 医学部, 教授 (00246547)
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研究分担者 |
深川 雅史 東海大学, 医学部, 教授 (00211516)
永井 竜児 東海大学, 農学部, 教授 (20315295)
山中 幹宏 東海大学, 農学部, 特任准教授 (70767946) [辞退]
豊田 雅夫 東海大学, 医学部, 准教授 (00349383)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 終末糖化産物 / 腎移植 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
腎移植患者の終末糖化産物(AGEs)に着目した本研究において、2021年度は組織中AGEsレベルの詳細な評価を行なった。免疫抑制剤を含むpolypharmacyが影響要因となっている可能性を考え、その種類や併存病変などを含めた詳細な解析を行った。 腎移植患者および腎臓病のない患者の組織中AGEsレベルをAGEsセンサー(RQ-AG01J、Sharp Life Science Co.)を用いて測定し同時に血清を保存した。全体で120例(腎移植患者:94、腎機能正常者:26)の組織中AGEsレベル(SAF-AGE:skin autofluorescence-AGE)を測定した。腎移植患者94名(平均年齢49.2歳、移植腎機能eGFR平均44.1ml/min)のSAF-AGEの平均は、0.57±0.10であり、腎機能正常者(対照群:0.49±0.07)より有意に高値を示した(p=0.0001)。また、腎移植患者間では、男性が高値を示し(0.58±0.10 vs 0.54±0.10, p=0.039)、患者透析期間との有意な相関関係が認められ(r=0.308, p=0.003)、さらに先行的腎移植を行った患者のSAF-AGEは、透析後腎移植患者より有意に低値を示した(p=0.040)。 次にSAF-AGEsが高値となる影響因子をロジスティックス回帰分析で解析した。その結果多変量解析で有意となった説明変数は、①年齢、②透析期間、③Statin製剤服用歴であった。 以上より新機種AGEセンサーで評価した外来腎移植患者の組織中SAF-AGEsは、移植前透析期間に影響を受けた。また、年齢不相応にSAF-AGEが高値を示すのは、若年時に腎不全となった患者及び長期透析患者、そして脂質異常症患者であった。腎移植患者の組織中AGEsの蓄積には糖質のみならず脂質異常症も関連していることが初めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規に導入したAGEセンサーだが、その測定における再現性に関しては現在まで情報が乏しい。したがって今回の研究対象者を利用して再現性の検証を行う必要があった。複数回の測定のため期間を要したことは進捗状況の遅延に影響した。 今研究は対象者への侵襲は軽微であり、測定時のCOVID-19感染の機会は限りなく少ないと考えている。しかし、SAF-AGEの測定に際し、ウイルス感染に対する対象者及び測定者の安全性への配慮、安全な測定場所の確保、患者へのワクチン優先接種業務など、2021年度においても継続的に蔓延したCOVID-19は少なからず進捗状況に影響した。また、やむを得ないこととは考えているが、少しでも院内滞在時間を少なくしようとする研究対象者はウイルス感染を懸念する意識が高く、本研究への参加を断念する患者も一定数(予定登録数の約3分の2)存在し登録症例数が予想より少なくなってしまった。目標とする登録数を確保するのに期間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に行った大規模な腎移植患者のSAF-AGE値測定から得られたデータを基本として、保存されている血清を用いた各種AGEsの濃度測定を逐次行っており、その関連性を含めた多方面からの解析を2022年度は遂行する。 また、AGEsに着目した本研究では、腎移植患者における組織中及び血中AGEsと、移植腎の非免疫学的予後規定因子と考えられる心血管病発症、移植腎機能低下との関連性を明らかするため前向き縦断研究を計画しており登録・準備を進めほぼ完了している。腎移植前後にわたる前向き縦断研究モデルで行なった研究は過去に報告がなく、結果として新知見が得られる可能性がある。 また、共同研究者の発案でAGEsと関連の深い翻訳後タンパク修飾物質の同時測定系が確立した。これらの物質の腎機能との関連性や体内に与える影響等についても報告がなく、本研究においても解析を進めていく予定である。未報告の新知見が得られる可能性があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
①繰越金が発生した理由:2021年度の研究遂行がやむなくやや遅延してしまった。そのため先ず購入予定の物品、消耗品が2022年度に繰り越された。また学会における結果発表も積極的に行う予定であったが、その機会もやや遅れることとなり、出張・学会参加に伴う費用、論文作成に費やす費用などについて2022年度に繰り越される結果となった。 ②次年度の使用計画:繰越金と2022年度請求分は、2021年度に購入予定であった物品(測定試薬、検体保存用器などの消耗品)と2022年度遂行予定への費用が主体となる。2022年度は本研究の最終年度となるため、スピードアップした遂行を目指している。昨年度まで研究遂行に遅延はあったが、横断研究対象者の血清保存や新規縦断研究の対象者の登録は順調に遂行できており、2022年度以降は予定通りの研究計画を考えている。また、研究遂行のための打合せや結果発表に伴う出張・学会参加に伴う費用に使用予定である。研究遂行中に発案された関連物質の測定や解析においても、2022年度に遂行し結果をだしていく予定である。
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