研究実績の概要 |
移植腎廃絶原因の非免疫学的機序と深い関連のある終末糖化産物(AGEs)に着目し、腎移植患者における組織中及び血中AGEsレベルの測定と背景因子について解析を行った。 腎移植患者の組織中AGEs(SAF-AGE: skin autofluorescence-AGE)をAGEsセンサーを用いて測定し、血中ではAGEs(CML、MG-H1)レベルを測定した。 ①横断研究:組織中・血中の両方を測定できたのは、腎移植患者93名(平均49歳)と対照群の生体腎ドナー候補22名(平均58.5歳)であった。腎移植患者の血中AGEs及びSAF-AGEは、ともに健常者よりも有意に高値を示した。MG-H1は、高齢・男性で高値を示し、糖尿病や脂質異常症を合併している患者で顕著であった。一方、SAF-AGEsは男性で高値を示したが、移植腎機能や年齢には影響を受けず透析歴のみ有意な相関関係が認められた(r=0.560, p=0.0025)。次にSAF-AGEsを従属変数とした重回帰分析では、透析歴(β=0.294, p=0.004)と血中CML値(β=0.260, p=0.011)が有意であった。 ②縦断研究:血中及び組織中AGEsの腎移植後の推移について、血中レベルは腎機能の回復で速やかに低下した。一方、SAF-AGEsは数か月間一定の傾向を示さず推移した。現時点で腎移植1年後まで追跡できた17例については、14例にレベルの低下が認められた。SAF-AGEs遷延高値の影響因子について追跡症例を蓄積して解析する予定である。 腎移植患者の血中AGEsは組織AGEsに影響を与えるが、移植後に速やかな低下が期待できる。一方で組織に蓄積したAGEs低下には期間を要する上に、移植腎機能や血糖値など背景因子の関連性が示唆される。腎移植時の組織中AGEsは高値で遷延することが判明し、移植後管理の影響を受けることが示唆された。
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