研究課題/領域番号 |
20K08971
|
研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
木村 光誠 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (20623846)
|
研究分担者 |
谷口 高平 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70779686)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | microRNA / パクリタキセル耐性株 / ABCB1 / 抗癌剤耐性 |
研究実績の概要 |
進行再発乳癌は集学的治療を用いても、依然として予後不良である。原因として、化学療法薬耐性獲得による奏功性の低下がある。本研究では、乳癌化学療法で頻用するタキサン系薬剤Paclitaxel(以下PTX)の薬剤耐性機序をmicroRNA(miRNA)の発現変化から解明する。 本研究で使用する細胞はMCF-7(親株)、MCF-7/PTXR(PTX耐性株)である。予備実験でMCF-7とMCF-7/PTXRに対し、miRNAの次世代シーケンス解析を実施し、miRNAの挙動を網羅的に解析した。また、MCF-7/PTXRにおいて、PTXの細胞外排出を行うP糖タンパクであるABCB1の発現亢進も認めており、ABCB1を標的とするmiRNA群の機能解析も行った。 まず、耐性株で最も発現が低下したmiRNA-196a、発現が上昇したmiRNA-3925-3pについて検証したが、PTXに対する感受性の改善を認めなかった。一方でWebデータからは、miRNA-455-3pがABCB1に結合することが示唆された。そこで、miRNA-455-3pを耐性株に導入すると、PTXに対するIC50の改善とABCB1のタンパク発現低下を認めた。これより、miRNA-455-3pがABCB1の翻訳抑制を介して、PTXに対する耐性を一部解除している可能性が示唆された。また、miRNA-455-3pの発現低下によりABCB1の発現が亢進し、PTX耐性に関与している可能性がある。 次に、miRNA-455-3pとABCB1の結合性を検証するために、ABCB1の相補塩基配列部位を組み込んだプラスミド(野生型)と、相補塩基配列部位に変異を組み込んだプラスミド(変異型)を作製し、Luciferase Reporter Assayを行った。野生型ではABCB1の発現が抑制され、変異型では発現が抑制されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耐性株で最も発現が低下していたmiRNA-196a、発現が上昇していたmiRNA-3925-3pについて研究を進めたが、PTXに対する感受性の改善を認めなかった。一方、Webデータからは、miRNA-455-3pがABCB1に結合することが示唆されたため、miRNA-455-3pを耐性株に導入したところ、PTXに対するIC50の改善を認めた。同時に、ABCB1のタンパク発現の低下を認めた。このことから、miRNA-455-3pがABCB1の翻訳の抑制を介して、PTXに対する耐性を一部解除している可能性が示唆された。これらの結果から、PTX耐性獲得に際して、miRNA-455-3pの発現低下によりABCB1の発現が亢進し、PTX耐性に関与している可能性が示唆されている。 また、親株にmiRNA-455-3p inhibitorを導入し、PTXに対する耐性を獲得するかを検証したが、IC50の上昇は認めなかった。親株はもともとABCB1の発現が少ないため、miRNA inhibitorを導入した場合の変化が捉えにくかった可能性を考えている。そこで、親株を用いた検証にはABCB1過剰発現プラスミドを作製し、現在検証を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
MCF-7を用いて、ABCB1を過剰発現させたプラスミドを作製し、PTX耐性との関連を調べる。プラスミド導入株にmiRNA-455-3pを導入し、コントロール群と比較して耐性が解除されるかどうかを確認する。 また、もともとABCB1発現の高い乳癌細胞株DU4475を新たに用いて、miRNA-455-3pとPTX耐性の関連性を同様に検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに進んでいるが、一部の実験結果に対して再現性を確認する必要があったため、少し計画が変更になった。再現性を必要とする実験の試薬などがコロナ禍の影響で今年度購入困難のため、次年度使用額が生じた。 また、次年度はABCB1過剰発現プラスミドを用いた実験および新たな乳癌細胞株DU4475を用いた実験も同時に行うため、その費用に研究費を使用する予定である。
|