研究課題/領域番号 |
20K08977
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 完 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80598508)
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研究分担者 |
木戸 丈友 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任講師 (00401034)
藤代 準 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60528438)
林 洋平 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (90780130)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胆道閉鎖症 / 疾患特異的iPS細胞 / 特性解析 / CPM陽性肝前駆細胞 / 胆管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
2020年度は胆道閉鎖症6例の患者の末梢血を採取し単核球遠心分離し、単核球培養を行い、リプログラム因子を導入(エピソーマルDNAプラスミドベクター)し、iPS細胞化し、iPS細胞様コロニーを単離し、細胞株凍結保存ストック作製、ゲノムDNA抽出を経て、 現在までに4症例でiPS細胞樹立が行われ、それぞれ12株(それぞれclone#1~12)ずつストックしており、残りの2症例は現在iPS細胞樹立中である。 すでにiPS細胞を樹立した4症例の12株については、iPS細胞特性解析/選抜試験として、①エピソーマルプラスミド残存試験(選抜試験)、②核型検査、③自己複製確認、④多能性確認を行った。①にて残存の最も少ない株をそれぞれ1株ずつ選抜した。この4つの株に関してはiPS細胞の特性解析として②核型検査、③自己複製能確認、④EB形成による多能性確認は完了し、テラトーマ形成試験による多能性の確認は現在進行中である。 一方で、①にて選抜した4症例(4株)について胆道閉鎖特異的iPS細胞由来肝前駆細胞の誘導実験を行った。iPS細胞株にActivinAを加え5日培養し内胚葉系に誘導し、BMP4、FGF2を加えて5日で肝細胞系に誘導、HGFを加えて5日immature hepatocyteへ誘導した。誘導したBA特異的iPS細胞由来肝前駆細胞を増幅させたところ、増幅率に症例による差がみられたが、現時点ではもともとのiPS株によるものか、実際の誘導効率の差なのかは検討できていない。さらに、増幅したCPM陽性肝前駆細胞をゲル内培養し、胆管上皮細胞へ誘導したところ、4症例由来の4株とも胆管上皮細胞の誘導は可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
10例を目標に対象患者さんのリクルートを行っているが、現時点で6例にとどまっている。また、4症例についてiPS細胞の樹立および特性解析はほぼ終了したが、全ゲノム解析のための資金が充分でなく変異解析などはまだ行えていない。 一方で、選別したiPS細胞から肝前駆細胞の樹立、cholangiocyteへの誘導も可能であることは確認できているが株(クローン)間の差など検討事項は解決できておらず、ここまでの課程での胆道閉鎖症の病態に関わるような成果は得られていない。しかし、実験の方向性は変更予定はなく、株(クローン)の不均一性が分化・増殖能に影響することも考慮しもう少し例数を増やしていきたいと考えている。 また、研究代表者の所属が変更になることもあり、倫理審査の修正や研究組織の再編も必要であった。 以上より、やや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の所属が替わったので、まず研究組織を再整備し倫理審査などの修正を行ったうえで、大きく2つの方向性で進めていく予定である。 1)胆道閉鎖症の患者さんのリクルートを当初の計画例数まで進める。特に、遺伝的な素因が疑われる症例についてリクルートを進めていきたい。もともと胆道閉鎖症は多因子が関与している可能性を疑っており、株(クローン)による不均一性が誘導されたcholangiocyteの解釈を難しくすると考えられるためある程度の例数は必要であると考えている。また、誘導した疾患特異的iPS細胞の変異解析を進めたい。なお、胆道閉鎖特異的iPS細胞の樹立と特性解析の成果は何らかの形で発表する予定である。 2)誘導したiPS細胞から胆管のシスト形成は可能であることは示されたので、今後はtubular formationやbranching tubular structureへと実験系を進めて行き、胆管形成のどこかの時点でBAに特徴的な異常がでてくるのか、また形態異常はなくとも遺伝子解析などでは異常が出るのかなどを検証していく。
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