研究課題
目的:乳癌幹細胞をターゲットとした有効な治療法確立のため、患者由来の乳癌組織から乳癌幹細胞を選択的に培養する方法を確立し、免疫染色や遺伝子発現により乳癌幹細胞の多様性を検討する。方法:手術で得られた未治療のER陽性HER2陰性乳癌48症例の乳癌組織を採取し、非接着性プレートを用いてスフェロイド培養を行う。得られた乳癌細胞について細胞表面マーカーCD44+/CD24-陽性率、マウス移植における生着能、分化能を調べることにより、スフェロイド培養により得られた乳癌細胞の幹細胞性を検討した。また培養した乳癌幹細胞を用いて免疫組織染色やDNA microarrayを行い、ER陽性HER2陰性乳癌幹細胞のグループ分類化や幹細胞性に関わるシグナルの探索を行った。結果:8症例の乳癌組織から得られた乳癌細胞の表面マーカーであるCD44+/CD24-陽性率はスフェロイド培養前後で比較すると93%の症例で増加していた。またスフェロイド培養で得られた細胞は少数でもマウスへ生着し、移植した乳癌幹細胞は再び上皮性に分化したことから乳癌幹細胞性が証明された。48例の乳癌幹細胞では、間葉系マーカーであるTwist1が72%、Snail 57%、Vimentin 64%の症例において陽性であったが、陽性パターンによって3つのグループに分類された。また14例の乳癌幹細胞からRNAを抽出しDNA microarrayによる遺伝子発現解析を行ったところ、乳癌幹細胞は大きく二つのグループに分類された。さらにその二つのグループの遺伝子発現を遺伝子オントロジー分析で検討したところ、両グループ間でいくつかの遺伝子群の発現が有意に異なることが明らかになった。結論:スフェロイド培養により乳癌組織から乳癌幹細胞をコンスタントに選択培養できることを証明し、ER陽性HER2陰性乳癌症例の乳癌幹細胞には多様性があることがわかった。
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