肝胆膵領域のがんは予後不良であり、手術不能な場合の長期生存は難しい。肝胆膵領域のがん組織は「がん間質の線維化」という共通した病理組織学的所見が認められる。肝原発の悪性腫瘍のうち、がん間質の線維化が高度な肝内胆管がんについて、がん間質に存在する免疫細胞を免疫組織学的に解析し、予後との関連を検討した。用いた症例はすべて治癒切除が行われた74症例である。 肝内胆管がん組織へのリンパ球(CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、CD20陽性B細胞)の組織面積当たりの浸潤細胞数は、多いほど予後(全生存、無再発生存)良好で、FOXP3陽性T制御性T細胞は少ないほど予後良好であった。ミエロイド系細胞(CD68陽性マクロファージ、CD66b陽性好中球)は、極端に浸潤が多い症例があり、統計学的有意差は認められなかったもののリンパ球と同様に浸潤が多いほど予後良好な傾向がみられた。がん免疫と関連すると考えられるがん細胞側の因子としてMHCクラスI分子の発現を観察したが、リンパ球やミエロイド系細胞浸潤の多寡との関連性は認められなかった。 これらの結果から、肝内胆管がんに対して、手術時にがん特異的な免疫が誘導され、術後の再発転移阻止に寄与していたことが推察される。MHCクラスI分子の発現が認められない症例はなく、ネオアンチゲンなどの探索が必要である。 現時点では、肝内胆管がんに対するがん免疫療法は標準治療となっていないが、手術時に十分ながん免疫が誘導されている症例では、術後補助化学療法として免疫チェックポイント阻害薬が予後を改善することが期待される。
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