本研究では膵島移植後の免疫細胞活性を効率的に制御する治療戦略の確立を目指している。 研究概略として、間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)をサイトカイン刺激して膵島と同時移植することにより免疫応答が抑制される現象がヒト免疫系においても確認できるか、骨髄由来MSCだけでなく、MSCのなかでも歯髄由来であるヒト乳歯歯髄幹細胞(Stem Cells from Human Exfoliated Deciduous teeth : SHED)を用いてin vitroの検討を行った。 本研究期間中に、MSC、SHEDをサイトカイン刺激することで細胞表面にPDL1が有意に表出することを新しく確認した。また、PD1-PDL1経路を遮断することで活性化PBMCの膵島細胞への細胞傷害活性が有意に抑制されることも確認できた。このことはMSC、SHEDが液性因子だけではなく、細胞接触による免疫制御能を有している可能性を示唆している。免疫制御に細胞接触の必要性があるか否かによって、治療戦略が異なってくることから、トランスウェルシステムを用いて、細胞接触を阻害した状態で膵島細胞への細胞傷害活性を確認した。結果として、トランスウェルありでは有意に傷害活性が低下した。すなわち、MSC、SHEDの免疫抑制効果に液性因子だけでなく、細胞接触による抑制メカニズムが存在することが証明できた。細胞接触に伴う細胞傷害メカニズムには、PD1-PDL1経路以外にも存在する可能性はあるが、MSC、SHEDと膵島グラフトが混在することが重要であることが示唆された。
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