研究課題
胃癌腹膜播種は転移再発形式のうちで頻度が高く、腹膜播種診断と治療は胃癌の予後を大きく左右するが未だ標準的治療と呼べる治療法は存在しない。RNAメチル化は、転写されたRNAレベルで生じる後天的修飾で、近年RNAメチル化の癌進展における機能的機序解明が世界的一流誌に報告されている。一方で消化器癌の癌進展のプロセスでのRNAメチル化の関与やRNAメチル化そのもののバイオマーカーとしての有用性に関する研究は十分なエビデンスがなく、本研究は胃癌腹膜播種進展に関与するRNAメチル化と制御されるmRNAに着目し、腹膜播種進展の機序を解明し、新たなバイオマーカーの検索と腹膜播種の治療戦略の確立を目的とした。補助事業期間においては2020年度までに胃癌患者の腫瘍組織由来のRNAを用いてRNAメチル化に関与する標的分子の発現値を定量し、RNAメチル化を促進するMETTL3/METTL14/WTAP、ならびにメチル化RNAのsplicing/transportに関与するYTHDF1では低発現群で有意に生存予後不良であり、RNA脱メチル化に関与するFTOでは高発現群で有意に生存予後不良である事を示した。2021年度は特にFTOに注目し胃癌細胞株でFTOをノックダウンしたところ癌進展が抑制され、FTOを過剰発現したところ癌進展が促進される事が機能解析で証明された。2022年度は胃癌異種移植マウスモデルを用いた動物実験を施行。ShRNAを用いてFTOをstable knockdownしたHGC27 cellの異種移植モデルやFTO inhibitorであるMA2投与群では、対照群(Naive/Sh-control)群と比べて腫瘍径、腫瘍重量が有意に小さく、FTOのStable knockdownがマウスレベルでも胃癌腫瘍増殖抑制に寄与している可能性が示唆された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
British Journal of Cancer
巻: 126 ページ: 228~237
10.1038/s41416-021-01581-w