研究課題/領域番号 |
20K09007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎 誠 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50444518)
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研究分担者 |
松浦 記大 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90804477)
山下 公太郎 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (20747159)
田中 晃司 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (70621019)
牧野 知紀 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80528620)
西塔 拓郎 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (20646468)
高橋 剛 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50452389)
黒川 幸典 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10470197)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動栄養介入 / 食道癌 / 術前化学療法 / フレイル / 高齢者 |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた現在、癌治療も高齢化しており、術後合併症の発生頻度の増加や予後への影響が問題となっており、高齢者癌治療の適正化が求められている。これまで生活機能の低下した高齢者に対して治療強度を弱めて治療することを中心に高齢者がん治療の開発が進められてきたが、虚弱(フレイル)高齢者は適切な介入により生活機能を正常に戻すことが可能であることが明らかになってきた。そこで本研究は、高齢者食道癌の術前治療中の運動・栄養介入により、身体機能改善を図り、癌治療の強度を落とすことなく、かつ安全に乗り越えていくことができるかどうかを明らかにすることを目的として、多施設共同ランダム化比較試験を開始した。介入群・非介入群をそれぞれ30例を目標症例数として行い、当初の計画通りの症例集積を認め、2020年12月に60例の症例登録が完了した。 本試験は、化学療法中に行う介入試験であるため、より安全かつ忍容性の高い運動介入方法であることが必須であり、これまで報告されてきているレジスタントトレーニングではなく全身振動トレーニングを採用した。2021年3月までに収集したデータでは、介入に伴う有害事象は認めなかった。また、運動介入が完遂できた割合(すなわち全身振動トレーニングを行えた割合)は85%、栄養介入が完遂できた割合(運動後のアミノ酸製剤の服用割合)も80%であり、化学療法中の介入にも関わらず、安全に遂行でき、かつ忍容性の高い介入方法であることが明らかになった。 本試験の主たる評価項目である化学療法前後での筋肉量の変化割合については、現在データ回収が終わり、データ解析を行っている。試験の症例登録およびデータ回収においては極めて順調に経過しており、2021年夏に開催予定である学会において発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢食道癌患者に対する術前化学療法中の運動・栄養介入のランダム化比較試験を2018年12月より開始した。2020年に入ってから同試験に賛同する施設があり、当初の単施設によるランダム化比較試験から多施設共同ランダム化比較試験に変更することとした。その後も予定集積ペースは順調であり、登録予定期間の2年である2020年12月に60例の登録を完了した。 2021年3月段階において、運動介入及び栄養介入に伴う可能性が考えられる重篤な有害事象の報告はなされておらず、安全に試験が遂行されている。 本試験の主要評価項目である化学療法前後における筋肉量の変化は2021年3月にデータの収集を行っており、2021年夏には解析結果を報告できる予定である。 本試験は試験登録、解析と予定通りに進んでおり、極めて順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
本試験における症例登録は完了し、現在臨床データの収集、さらなる経過観察を行っているところである。 運動介入前後における血清学的データ(マイオカインなど)の変化については、アッセイに必要なELISAのキットの購入をする予定にしている。購入後速やかに各施設に配布して、検査の結果を今後収集していく予定である。 本試験の結果、これらの運動栄養介入が安全かつ忍容性が高く、筋肉量の維持につながることを証明し、またこの介入によって手術の安全性を高め、術後の健康状態の向上につながることを明らかにしていきたい。 また運動や栄養の適正化についても考察していき、今後新たながん支持療法としての役割を模索していく予定である。
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