研究課題/領域番号 |
20K09016
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
塩崎 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40568086)
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研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胃十二指腸外科学 / 癌幹細胞 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
令和2年度は、まず、ヒト胃癌組織における電位依存性Ca2+チャネル(voltage-gated calcium channel: VGCC)の発現レベルを解析した。胃癌組織において、癌細胞の細胞膜・細胞質にVGCCのサブユニットであるCACNA2D1の発現が確認された。IntensityとProportionからCACNA2D1発現をスコア化し、臨床症例を二群化して比較したところ、CACNA2D1発現群の予後が有意に不良であった。次に、種々のヒト胃癌細胞株におけるCACNA2D1発現を解析し、MKN7、HGC27においてCACNA2D1が高発現していることを確認した。両細胞株において、CACNA2D1 siRNAをトランスフェクションしたところ、細胞増殖抑制効果・アポトーシス増強効果を認めた。また、CACNA2D1 siRNAの導入により、細胞遊走・浸潤能が抑制されることを確認した。現在、CACNA2D1 siRNAを導入した細胞株の遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析している。 また、胃癌細胞株MKN74から癌幹細胞を抽出・培養し、網羅的遺伝子発現解析からCACNA2D1 とCACNB4が癌幹細胞において高発現していることを見出し、その阻害剤アムロジピン、ベラパミルの癌幹細胞増殖抑制効果についてまとめ、英文論文として報告した(Ann Surg Oncol. 2021)。 一方で、食道癌におけるANO9 (Ann Surg Oncol. 2020)、CLCN2 (Ann Surg Oncol. 2021)、CFTR (Ann Surg Oncol. 2021)、胃癌におけるANO9 (Cancer Sci. 2021)などのイオン輸送体の機能解析・臨床病理学的意義を解明した。同時に、上部消化管癌における、イオンチャンネルを介した細胞死・生存制御機構に関する新知見と既報を総説論文としてまとめた(Front Cell Dev Biol. 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、ヒト胃癌組織における電位依存性Ca2+チャネルCACNA2D1の発現解析、癌細胞におけるCACNA2D1を介する細胞周期・アポトーシス・細胞浸潤制御機構の解明、MKN74由来癌幹細胞におけるCACNA2D1、CACNB4を介する癌幹細胞特異的な増殖抑制効果の検討などの基礎実験は、ほぼ終了している。また、消化器癌における種々のイオン輸送体の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、CACNA2D1 siRNAを導入した細胞株の遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、術前化学療法施行症例を中心に胃組織内CACNA2D1・癌幹細胞マーカー発現を同様に解析し、化学療法の組織学的効果との相関について検討する。更に、各種抗癌剤・分子標的治療薬(5FU、シスプラチン、パクリタキセル、トラスツズマブ)による抗腫瘍効果が、CACNA2D1阻害剤アムロジピンの併用により増強されるか否かを解析する。また、癌幹細胞におけるCACNA2D1・イオン動態を介する細胞周期・アポトーシス制御機構解明を進めるとともに、in vivoにおけるCACNA2D1制御による皮下腫瘍成長抑制効果、及び抗癌剤併用効果について検討する予定である。
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