研究課題/領域番号 |
20K09020
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
太田 竜 日本医科大学, 医学部, 助教 (30839824)
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研究分担者 |
山田 岳史 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50307948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 尿中ctDNA / liquid biopsy / 大腸癌 / KRAS |
研究実績の概要 |
liquid biopsyは、担癌患者において末梢血より採取した循環DNA(cfDNA)からドライバー遺伝子を標的として循環腫瘍DNA(ctDNA)の解析を行うのが通常である。悪性腫瘍における血漿を用いたliquid biopsyは先進施設においては数多くの疾患、多臓器に幅広く導入されている。一方尿中ctDNAによるliquid biopsyは未だ極少数の報告のみで、膀胱癌や前立腺癌をはじめとした泌尿器悪性疾患や肺悪性腫瘍での報告が散見されるが大腸癌では僅少である。今後も漸増する大腸癌において高濃度および高精度で抽出可能な尿中ctDNAを用いたゲノム解析は、血漿によるliquid biopsyを凌駕することが予想される。また、この解析法が大腸癌のみならず、他の悪性腫瘍にも導入が容易であることは確定的である。血漿によるliquid biopsyの欠点を尿により改善せし得るため、非常に価値の高い手法でありworld wideに浸透させていくべきと考える。当院で手術を行った大腸癌患者を対象として、腫瘍組織、血漿ctDNA、尿中ctDNAよりdigital PCRを用いてKRAS遺伝子変異の検出を行い、感度、特異度等を検索するとともに、stage別の検出割合等も検索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【背景】非侵襲的な尿中ctDNAを用いた大腸癌におけるKRAS遺伝子変異の解析を行いその有用性について検討した。 【対象と方法】2018年7月以降に当科で原発巣または転移巣切除を行った大腸癌において、尿、血漿、組織それぞれからDNA抽出が可能であった症例を対象とした。digital PCRを用いて各サンプルのKRAS遺伝子変異を解析し、尿中ctDNAの感度や特異度とともに腎機能による差異について検討した。 【結果】対象症例は200例存在し、男性119例、女性81例、年齢中央値は71歳であった。右側大腸69例、左側大腸131例で、病期はStage I: 27例、Stage II: 51例、Stage III: 75例、Stage IV: 47例であった。サンプル量を等量換算して比較すると、血漿と比較し尿で有意にctDNA濃度は低値であった。ctDNA濃度は血漿にてStage依存的に上昇したが、尿ではStageでの差異は認められなかった。KRAS遺伝子変異は、組織42.0%、血漿15.5%、尿18%に同定された。組織KRAS遺伝子変異例において、血漿ctDNAのKRAS遺伝子変異同定感度、特異度はそれぞれ29.8%、94.8%、尿中ctDNAは33.3%、93.1%であった。Stage別に検討すると、血漿ctDNAはStage IV、尿中ctDNAは根治切除例(Stage I-III)で感度が高い結果だった。 【考察】大腸癌におけるKRAS遺伝子解析において尿中ctDNAは非侵襲的で血漿と同等の解析が可能で、腎機能低下例においても感度は良好であり有用と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
尿中ctDNAは非侵襲的に血漿cfDNAと同等の解析が可能であり、血漿ctDNAとの統合解析にてより感度が上昇し、腫瘍組織では同定不能なheterogeneityを検出することが可能であった。また根治切除可能なstageII, III大腸癌患者における尿中ctDNAの感度が良好であったという結果から、術前尿中ctDNA陽性のstageII, III大腸癌患者における術後尿中ctDNAの検出有無と予後との相関について検討を行う予定である。また化学療法に伴う尿中ctDNAの変化についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会等にて研究内容を発表予定であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響にて渡航が困難となったため未使用額が生じた。
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