研究課題
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease:IBD) は、長期経過中に大腸癌を発症することがあり、腸炎関連大腸癌(Colitis- associated cancer:CAC)と総称されている。申請者は、新規インドール化合物 MA-35 が、炎症性発癌マウスモデルにおいて大腸の炎症および発癌を抑制することを発見、その抑制メカニズムの一部を解明し報告した。 しかし、MA-35 による発癌抑制メカニズムの全容は十分に解明されていない。本研究の目的 は、AOM/DSS マウスモデルにおいて、MA-35 投与により変化する 1)腸内細菌叢のプロファイル、2) 腸管免疫細胞のフェノタイプを解析し、MA- 35 が何を標的にし炎症性発癌を抑制するのか、腸内細菌叢と腸管免疫の観点から明らかにすることである。また、MA-35の薬物動態を明らかとすることである。研究成果1) 腸管免疫細胞フェノタイプの解析:犠死後のマウスから、腸管膜リンパ節(MLN)を採取し、フローサイトメトリで解析し、コントロール群とMA-35投与群を比較した。FoxP3陽性細胞合、CD3/CD4陽性細胞、CD3/CD8陽性細胞の割合に両群間で明らかな有意差を認めなかった。2) メタボローム解析:LC-MSを用い、クレアチニン、メチルアデノシン、トリメチルアミンNオキサイド、フェニルサルフェイト、クロロフェニルサルフェイトなどの腸内細菌叢による血中代謝物を計測した。コントロール群とMA-35投与群において有意な差のある代謝物は同定されなかった。差が認められなかった理由として、誘発剤を使用し発癌マウスモデルを作成しており、誘発剤による腸内細菌叢への影響、日内変動や食事の影響などが関係している可能性が示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Curr. Issues Mol. Biol.
巻: 4 ページ: 2895-2907
10.3390/cimb45040189