研究課題/領域番号 |
20K09027
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
林 秀樹 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20312960)
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研究分担者 |
吉村 裕一郎 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (90826471) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胃癌リンパ節転移 / AI診断アシスト / 多施設共同臨床試験 / 診断時間 / 診断精度 |
研究実績の概要 |
昨年度に行った病理専門医のmanual anotationによる教師データを用いた機械学習の診断精度に関する検討結果を論文化し専門誌に投稿したところ,査読者からindependentなデータによる再検証を求められたため,当初の検討対象とは異なる分化型胃癌治療例10例からデータの再収集を行い,精度検証を行った。その結果,昨年度のcross validationで得られたAUC=0.9994とほぼ同等の結果(AUC=0.9914)が得られたため,これらのデータを加え再投稿中である。 また,この様なAI病理診断のアシストが実臨床でどのように貢献するのかを明らかにするため,多施設共同の臨床試験を企画し実施した。本試験では分化型胃癌ばかりではなく,一般型組織型全種類を対象とした転移診断アルゴリズムを構築した。本課題で目標としている動物実験モデルデータを用いた転移学習の準備が進んでいないため,ImageNetで事前学習を行ったモデルを収集症例データ(転移陽性リンパ節84個,転移陰性リンパ節776個)でfine-tuningしたResNet-152を用いた。新しく構築したモデルでの診断精度はAUC=0.976と,分化型のみのモデルと比べわずかに低いものであった。このモデルを用いて領域リンパ節のバーチャルスライド画像上に転移の可能性の高い部分を自動で表示するシステムを構築し,診断精度,診断時間の違いをAIアシスト有りと無しで比較を行った。微小転移(大きさ2-0.2mm)とITC(大きさ0.2mm以下)転移を対象とした検討で,いずれもAIアシストで診断精度の向上が見られたが,統計学的有意差は認めなかった。診断時間に関しては,アシスト有りでITCにおいては統計学的有意に診断時間が短縮したものの,微小転移診断では有意に診断時間が延長した。この相反する結果の意義を現在検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の初年度に画像の位置合わせや補正プログラムの研究を分担する予定であった大西助教が海外移動に伴って研究組織に加わって貰うことができなくなった上に,転移学習のための新しいデータベース構築・アンサンブル学習・超解像技術など,新技術の応用を主に担当することになっていた吉村助教が富山大学へ異動となった。本来,国内の研究施設への異動であれば研究組織から抜ける必要は無いが,異動先施設の事情により年度途中からほぼ研究の分担が不能となった。現在は研究代表者がすべての研究を遂行できる状況になったが,この間の研究組織の不可抗力の変更により,研究体制の再構築に大幅な時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度,多施設共同で行った胃癌一般組織型全種を対象としたAI診断アシストの有用性に関する臨床試験結果の解析を進め,論文化し公表を目指す。また,本解析の途中で,これまで確立した解析手法が,胃癌の主腫瘍に浸潤するリンパ球(TIL)の客観的分析に有用である可能性が示唆されたため,TILの浸潤様式に関連することが指摘されている免疫チェックポイント阻害剤の有効性の予測を,主病巣のAI解析を用いて可能かどうかを検討する多施設共同試験を立案し実行する。また,これまで研究分担者の異動に伴い解析の遅れていた転移学習のための新しいデータベース構築・アンサンブル学習・超解像技術の転移診断への組み込みに関して検討を進める。
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