研究課題
前年度までに確認した胃癌細胞株(NUGC-3ならびにMKN74)と血小板との共培養による遊走・浸潤能の亢進等、悪性度増強の分子機序について検討を行った。血小板の活性化によってα顆粒が放出されることが知られているため、α顆粒内に多く含有されるtransforming growth factor-β(TGF-β)の阻害剤を用いた胃癌細胞株の遊走・浸潤能の亢進への影響について検討を行った。胃癌細胞株とヒト血小板との共培養時のTGF-β阻害剤の投与の有無によるBoyden chamber assayを用いた遊走・浸潤能解析に解析した結果、TGF-β receptor kinase inhibitor(TRKI)付加によって胃癌細胞株の遊走・浸潤能が顕著に抑制されることが確認された。また、前年度の解析で、胃癌細胞の血小板付加による遊走・浸潤能の亢進について、EMT関連分子の発現増強も確認されていたが、MMP9をはじめとするEMT関連分子の発現増強が、TRKI付加によって抑制されることも確認された。一方で、血小板の胃癌進展への関与について検討するため、2つの異なる胃癌患者コホートの術前血漿を用いて、血小板表面上のC-type lectin like receptor 2(CLEC-2)の生体内リガンドであり癌関連線維芽細胞の表面マーカーでもあるPodoplaninについて測定を行い、その測定値と臨床病理学的因子との比較検討を行った。その結果、胃癌患者の血漿中可溶性Podoplanin高値群が、スキルス胃癌を代表とする浸潤型胃癌の血漿中バイオマーカーとなる可能性が示唆され、高値群で予後が有意に不良であることが判明した。
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Oncology Reports
巻: 47 ページ: 51
10.3892/or.2022.8262.