研究課題/領域番号 |
20K09033
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉田 龍一 岡山大学, 大学病院, 講師 (80534768)
|
研究分担者 |
香川 俊輔 岡山大学, 大学病院, 准教授 (00362971)
重安 邦俊 岡山大学, 大学病院, 助教 (70544071)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 膵癌 / リキッドバイオプシー / ctDNA |
研究実績の概要 |
前年度に行った解析に引き続き、循環血液中の腫瘍由来DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)の意義について下記を行った。膵癌に対して外科切除を行った114例の術前に採取した血漿を用いてKRAS遺伝子のmutation analysisを行い、術前における予後指標として意義について追加検証した。この解析から腫瘍由来のKRAS mutationを血中に認めた症例は極めて予後不良であること、画像診断における切除可能性分類や膵癌における唯一の生物学的指標であるCA19-9値とは独立した予後不良因子になることが分かった。それぞれの予後因子の有無をスコア化し、さらに組み合わせて利用することにより、切除を企図する膵癌患者の術前因子により予後の層別化が可能になることが見いだされ、新たな治療戦略構築に有用なバイオマーカーとしての意義を示すことが可能であった。 また、根治切除術を行った膵癌106例を対象として術前後のctDNAの経時的変化と予後との関連、その意義について検証した。この結果、術前ctDNA陰性例であっても術後にctDNA陽性化する症例は予後不良であり、術前のみならず術後もctDNAを評価する意義があることが示された。また、ctDNAの術前後の推移に基づき4群に分類したうえで、各群の予後、その特徴を解析した。まず、術前後とも陰性であった症例はそのほかの3群と比較し有意に予後良好であること、次に術前後に1回でもctDNAが陽性となった3群はいずれも同等の予後であることが示された。このことからそれぞれの群の再発形式に着目し追加解析したところ、術前後にctDNAが1回でも陽性となる症例では術前後とも陰性であった症例と比較し有意に肝再発率が高く、再発後の生存時間も有意に短いことが示された。術前後を組み合わせて解析することで、膵癌の治療成績に大きく寄与する肝再発症例の選別が可能になるdataが示された。 2022年度は下記研究を行う予定である。 1 腫瘍RNAの解析
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) ctDNAの解析結果から当初の想定していた通り、術前に腫瘍由来のKRAS mutationが血中に認められる症例は予後が不良であること、従来から用いられてきた指標と差別化できることも示すことができた。 また、術前のみならず、術後も腫瘍由来のKRAS mutationを解析することで更なる予後の層別化が可能になること、特に予後の不良な肝再発例を予測するために有用な指標となりうることも示すdataが得られた。 腫瘍RNAの解析では、計画段階での仮説の検証が困難で引き続き実験を進めて行く予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、下記研究を主に遂行予定である。 膵癌におけるRNA解析として、膵癌の分子サブタイプを分ける指標の一つであるGATA6(GATA binding protein 6)に着目し、解析を進める予定である。 そして、これまでに得られた結果と遂行予定の実験結果を併せて、真の切除適応や最適な切除時期の同定が可能となる「真に臨床に生かせる膵癌の複合バイオマーカー」作成に取り組む予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験消耗品の購入が当初の予定より安くすんだため、次年度繰越金が生じた。この繰越金は、次年度の実験消耗品に用いる予定である。
|