本研究の目的は「胃癌悪液質の発症、進展におけるファルネシル化の意義を分子レベルで解明すること」、「FTIによる胃癌悪液質の発症予防および既に発症した悪液質の是正効果の検証とその作用機序を解明すること」である。 ①まず、前年度に引き続き、胃癌悪液質マウスモデルを用いて、ファルネシル変換酵素阻害薬(FTI)の悪液質発症抑制効果(腫瘍形成後よりFTI投与開始)の再現性評価に取り組んだ。その結果、やはりFTI投与群において、骨格筋重量および脂肪組織重量の低下が抑制される傾向を認めた。なお、腹膜播種形成および腹水貯留に関しては、FTI投与群における変化は明らかではなかった。 ②in vitro実験として、悪液質誘導胃癌細胞株として58As9を使用し、細胞のファルネシル化やFTase発現を評価、また、培養上清中の炎症性サイトカインの測定、さらにはFTI添加によるそれらの変化を評価した。その結果、FTI添加によって培養上清中の炎症性サイトカイン (TNF-αおよびIL-1&6) に変化はなかったものの、胃癌細胞株における炎症性サイトカインは低下した。なお、細胞のファルネシル化は明らかに阻害されたが、FTase発現には変化は認めなかった。 ③胃癌悪液質骨格筋in vitroモデルとして、C2C12横紋筋由来細胞株に58As9培養上清を添 加した。その結果、58As9培養上清の添加によって筋管細胞は萎縮する傾向にあり、現在、その変化の数値化を試みている。また、同モデルにおけるインスリン抵抗性 、酸化ストレス、免疫反応シグナル、オートファジーへの影響を検証中であり、さらにFTI添加による変化も確認する。また、上記モデルに加え、脂肪組織in vitroモデルとして、3T3-L1脂肪細胞株に58As9培養上清を添加する予定である。
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