研究課題
MSI-high腫瘍は、遺伝子変異数の著増とネオ抗原の産生、その結果著明なリンパ球浸潤と免疫チェックポイント分子の高発現を特徴とし、多くの癌種で独立した表現型であり、抗PD-1抗体治療薬が有効である。しかしながらMSI-lowに関しては、そのゲノム変化や腫瘍免疫の特徴を明らかにしようとした報告は非常に少ない。そこで本研究では、ゲノム変化や腫瘍免疫の観点から、その特徴を明らかにすることを目的とする。また、既存のパブリックデータベースとの統合解析も行うこととした。今回、MSI-lowを除外するのに有用なBAT40をNCIの5マーカーに加えることとし、MSI-PCR法(BAT25、BAT26、BAT40、D2S123、D5S346、D17S250)を行った。判定方法は、2つ以上のマーカーで不安定性を示した場合をMSI-high、1マーカーのみをMSI-low、認めないものとMicrosatellite stable (MSS)とした。エピジェネティックな変化に関しては、腫瘍FFPE部分からマクロダイセクション法により腫瘍DNA を抽出し、バイサルファイト処理を行った後、消化管腺癌に選択的なCpGアイランドプロモーターのミニパネルを用いてそのメチル化を測定した。Methy-Light PCR法を用いて、ハウスキーピング遺伝子のCOL2A遺伝子と、ユニバーサルメチル化DNAを用いたメチル化率の割合(percentage of the methylated reference: PMR)を算出し、PMR≧4.0をメチル化陽性として解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
網羅的解析に耐えうるMSI-low腫瘍の凍結サンプルが欠乏していることから、FFPEサンプルを用いて検討を行うこととした。選択した11か所のCpGサイトはMLH1、CDKN2A、MGMT、CHFR、CDH1、IGF2、RUNX3、CRABP1、NEUROG1、CACNA1G、SOCS1であり、胃腺癌、大腸腺癌で高頻度にメチル化を呈するCpGプロモーターである。以前、LINE-1のメチル化状況を定量化し、MSI-low群では有意にメチル化頻度が低いことが判明したが、今回の検討でも同様に、すべてのマーカーでもメチル化率が低いことが明らかとなった。すなわち、MSI-L腫瘍の発癌には、エピジェネティックな発癌は関係していない可能性が高いと考えられた。
ニボルマブ投与症例の腫瘍FFPE部分から同様にDNAを抽出し、MSI-PCRアッセイを行い、ニボルマブの効果との相関を検討する。また、網羅的解析に耐えうる凍結組織の前向き検体の集積を継続する。
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