研究課題
MSI-high腫瘍は、遺伝子変異数の著増とネオ抗原の産生、その結果著明なリンパ球浸潤と免疫チェックポイント分子の高発現を特徴とし、多くの癌種で独立した表現型であり、抗PD-1抗体治療薬が有効である。しかしながらMSI-lowに関しては、そのゲノム変化や腫瘍免疫の特徴を明らかにしようとした報告は非常に少ない。そこで本研究では、ゲノム変化や腫瘍免疫の観点から、その特徴を明らかにすることを目的とする。今回、MSI-lowを除外するのに有用なBAT40をNCIの5マーカーに加えることとし、MSI-PCR法(BAT25、BAT26、BAT40、D2S123、D5S346、D17S250)を行った。判定方法は、2つ以上のマーカーで不安定性を示した場合をMSI-high、1マーカーのみをMSI-low、認めないものとMicrosatellite stable (MSS)とした。エピジェネティックな変化に関して、消化管腺癌に選択的なCpGアイランドプロモーターのミニパネルを用いて解析を行うも、有意な相関は認められなかった。CD8+リンパ球浸潤の検討では、MSI-L腫瘍はMSSと比較して、腫瘍内 において有意に高度な浸潤を認めた (P = 0.048)。つまり、MSI-L腫瘍ではMSSとは異なり、抗腫瘍免疫が発動している状況であることが示唆された。一方、腫瘍辺縁部 ではそのような変化は認められなかった 。次に、腫瘍細胞におけるPD-L1陽性率 (TPS 1%以上を陽性と定義)を検討したところ、MSI-L腫瘍のPD-L1陽性率はMSSと同じく低レベルであり、PD-1/PD-L1を介した免疫回避機構の関与は否定的であると考えられた。MSI-H腫瘍においては、腫瘍内および腫瘍辺縁部の両方で有意にCD8+リンパ球浸潤を認め、またPD-L1の発現も22%の症例で認められた。
2: おおむね順調に進展している
特に問題なく順調に進捗している。
TP53遺伝子変異型と、MSIステータスとの有意な相関が認められたことから、腫瘍局所におけるリンパ球浸潤状態との統合解析を行う予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)
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