研究課題/領域番号 |
20K09046
|
研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
今村 裕 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70583045)
|
研究分担者 |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, プロジェクトリーダー (10334814)
清谷 一馬 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 免疫ゲノム医療開発プロジェクト, 主任研究員 (30433642)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 外科 / 消化器外科 / 食道胃接合部癌 / マイクロサテライト / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
本研究では食道胃接合部腺癌を対象とし、非EBV非MSI-high腫瘍の中で特にMSI-lowは独立した表現型であるのではないかと着想し、MSI-HおよびMSS腫瘍との比較検討や既知の大規模データベースと統合解析することで、その臨床病理学的特徴およびゲノム変化を明らかにすることとした。 次世代シーケンサーを用いた解析を予定したが、DNA quality不良のため、全エキソン解析、全ゲノム解析は断念せざるを得なかった。そこで、TCGAのパブリックデータベースを用いて検討することとした。TCGAの胃食道の腺癌435例を対象とし、MSI-H 78例、MSI-L 65例、MSS 292例であった。マイクロサテライト異常はゲノムにindel変異を来しやすいため、その分布をマイクロサテライトステータス別に見てみると、MSI-LではMSSよりindel数が有意に多く(P=0.016)、MSI-Lの症例分布をindel数別にみた場合、MSI-L症例の分布は明らかにMSSより高いもindel burdenにシフトしていることがわかった。また、MSI-L腫瘍にはTP53 truncation変異が多い傾向にあること、またTP53変異を来したMSI-L腫瘍では特にindel burdenが高く、この傾向はMSI-H腫瘍でも同様であった。しかしながら、このTP53変異による違いは、CD8+細胞数とは有意な相関は認められなかった。 今回の我々の検討から、MSI-LはMSSと比較して腫瘍内CD8+細胞浸潤が多く、リンパ節転移頻度が少ない傾向にあり、予後良好であり、これらの特徴はMSI-H腫瘍に類似していた。このようにMSI-L腫瘍にはホスト側の免疫反応が作動していることが示唆されるが、PD-1/PD-L1による腫瘍免疫回避は否定的であった。また、MSI-L腫瘍ではtruncating型のTP53変異を有しており、同様の傾向をTCGAデータセットでも認めたことから、MSI-L腫瘍の原因の可能性であることが示唆された。
|