研究課題/領域番号 |
20K09047
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 洋毅 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30422124)
|
研究分担者 |
畠 達夫 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30806237)
青木 修一 東北大学, 大学病院, 特任助手 (30844451)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 胆道癌 / 染色体不安定性 / テロメア |
研究実績の概要 |
近年の大規模な全ゲノム・エクソームシーケンスの解析により、膵・胆道癌がなぜ難治なのか?いう問いに対する答えが垣間見えるようになった。膵癌はbig 4とよばれるKRAS, TP53, CDKN2A, SMAD4に高頻度に遺伝子異常を認めるもの、それぞれの遺伝子およびその異常はundraggable、つまり生化学的構造などの理由による分子標的治療の候補になりにくい、という課題が挙げられる。胆管癌については、肝内胆管癌、胆嚢癌、肝外胆管癌のそれぞれが異なる遺伝子変異プロファイルを有し、肝内胆管癌についてはIDH1遺伝子やFGFR融合遺伝子が分子標的治療候補となりうるものの、実際の遺伝子異常が生じる頻度は稀であり、さらに膵癌のような高頻度に生じる遺伝子異常がないことからも、標的を絞りにくい、という課題がある。これらの課題を克服するべく、癌種特異的な遺伝子異常を標的とするこれまでの診断・治療のアプローチとは異なる、本研究では悪性形質転換を引き起こした、いわゆる“癌化”した細胞特有に生じるテロメア異常に着目した。 テロメア癒合DNAの検出手法の改良として、研究計画書に示すがごとく、NCBIのゲノムデータベースから各染色体領域のサブテロメア領域の配列をサーチし、テロメア癒合DNA検出のためのprimer/probeの組み合わせを設計している。また、デジタルPCRヘのプラットフォームへ応用するために、PCR反応条件を検討している。クロモスリプシスの検出またはPD-L1の免疫染色に用いる組織試料について、腫瘍含有量を考慮しつつスライドの選定をすすめている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織中のクロモスリプシスの検出のため、術前治療歴のない膵癌、胆道癌症例を抽出している。膵癌、胆道癌は浸潤部の間質量が多く、切片中の腫瘍含有量を香料しながらDNAを抽出に必要なスライドの選定を継続して行っている。 テロメア癒合DNAの検出については、研究計画書に示したごとく、申請者が過去に報告したリアルタイムPCR法にさらに改良を加え、より高感度かつ定量的なテロメア癒合DNAを検出するためデジタルPCRプラットフォームを用いるため、現在種々の検討を加えている。各染色体のサブテロメア領域をNCBIデータベースから抽出し、primerの設計を行っている。特に18番染色体はクロモスリプシスの好発部位であるとの報告から、18番染色体に特化したプライマープールも合わせて作成中である。その他デジタルPCRの反応条件を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
デジタルPCRを用いたテロメア癒合DNAの検出法の確立を最優先事項に設定し、再現性のある最適化された条件を検討していく。まずは既報のリアルタイムPCRに準じてPCRを行い、増幅産物をT/A cloningすることで陽性コントロールとなるプラスミドDNAを得ておく。さらに、反応ウェル数当初24ウェル分としたが、生体試料に含まれるテロメア癒合DNA のコピー数も様々であることが想定されることから,8,16,24,32ウェルの条件で陽性ウェルの割合について比較検討する。また、特異的なプローブのアニールを得るため、プローブ中に含まれるテロメア癒合DNAの反復回数についても条件検討を加える。 さらにSNPアレイ用のためのDNA抽出、およびPD-L1の免疫染色用のサンプルを選定などについて同時進行としてすすめていく。生体試料からテロメア癒合DNAできることを短期的な目標とするため、胆汁、膵液などのサンプル採取も継続していく。
|