研究課題
本年度は、前年度に明らかにすることができた、癌細胞における1)3パターンの代謝状態(依存度)、2)低分子化合物による大腸癌・胃癌細胞内の解糖系代謝の阻害・抑制効果、3)metabolic switchが惹起されている可能性、主にこの3点の結果について、当院において樹立されたヒト検体由来の大腸癌・胃癌細胞株を用いて個々の検体の代謝プロファイリングでの検証を行った。立体培養下での代謝測定も行ったための実験条件設定に時間を要したが、ほかの細胞株と同様に代謝状態・阻害効果に違いがみられることが明らかとなった。また、ピルビン酸代謝において、新たにミトコンドリア呼吸阻害を可能とする低分子化合物を用いることで、LDH阻害とoppositeなストレスを癌細胞に付与したところ、細胞内において解糖系が増大するという結果を得た。さらに、LDH阻害剤、ミトコンドリア呼吸阻害剤を各々用いることで、癌細胞において細胞内エネルギー産生の強制かつ急速な低下の影響を回避するための細胞内代謝変容機能が存在することを明らかにし、上記3)のさらなる仮説の検証が行えた。また、これらの代謝阻害剤の投与が一部の細胞株において、抗腫瘍効果をもたらすことも明らかにした。計画していたin vivoでの検証については他大学との共同研究として生体内腫瘍の代謝状態の可視化を予定ていたが、度重なるCOVID-19に対する行動制限の影響により、予定していた超偏極13C-MRIを撮像に遅れが生じてしまったが、上記について明らかにすることができた。
3: やや遅れている
前年度に続いて、COVID-19による研究活動・移動制限があったため、研究の遂行に若干の遅延が生じた。特に、本研究が他大学との共同実験を含む性質上、主としてin vivoでの13C-MRI撮像実験に遅れが生じた。一方で、一部の癌細胞において細胞内エネルギー産生の強制かつ急速な低下の影響を回避するための細胞内代謝変容機能が存在する、という新たな知見を得ることができた。
低分子化合物による大腸癌・胃癌に対する代謝阻害治療法の臨床応用を目指して、来年度は以下の研究を予定している。これまでに得られた各種癌細胞株の代謝プロファイリング・代謝阻害剤による代謝変容の結果を元に、これらの担がんマウスモデルを用いて超偏極13C-MRIを撮像する手法でin vivo代謝モニタリングを行い、生体腫瘍内での代謝プロファイリング・代謝阻害剤による代謝変容について比較・解析を行う予定である。また、これらの結果を元に、担がんマウスモデルに対して各代謝阻害剤を投与し、実際に抗腫瘍効果が得られるかについて検証する。以上によって、超偏極13C-MRIを用いた大腸癌・胃癌に対する代謝阻害治療法の臨床応用が可能か否かについて明らかにする。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 12155
10.1038/s41598-021-90921-0
https://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/info/info-theme/