研究課題/領域番号 |
20K09059
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
東 孝暁 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (70594878)
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研究分担者 |
高森 啓史 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (90363514)
林 洋光 熊本大学, 病院, 助教 (80625773)
山村 謙介 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (10816507)
中川 茂樹 熊本大学, 病院, 特任助教 (10594872)
宮田 辰徳 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (80594887)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / CAF / スタチン / CXCL12-CXCR4 signaling |
研究実績の概要 |
本邦において膵癌による死亡数は年々増加傾向にあり、2017年時点では第4位の死亡数となっている。膵癌のリスク因子として喫煙、アルコール、糖尿病、膵炎、膵癌の家族歴などが挙げられているが、早期発見することは困難であり、発見時に約30%の症例は根治手術が不能な進行癌として診断される(Gemenetzis, Ann Surg. 2019) 。 根治切除可能であっても、Stage I 膵癌の5年生存率は60%前後、全膵癌の5年相対生存率は約8%と非常に予後不良な疾患である。膵癌の予後の改善は喫緊の課題といえる。膵癌の予後を不良にしている要因の一つとして化学療法の奏効率の低さにある。腫瘍組織には、癌細胞のみならず腫瘍血管や癌関連線維芽細胞(CAF)など様々な種類の細胞が存在し、癌微小環境が構成されている。癌微小環境は癌の増殖・進展に深く関わっており、新たな治療ターゲットとしても注目を集めている(Mizutani, Cancer Res, 2019.Shi, Nature, 2019 ) 。我々は、CAF による癌の増殖、進展メカニズムのひとつとして、CXCL12-CXCR4 signalingを介し転移、浸潤を促進することを報告してきた(Izumi, Int J Cancer, 2016. Miyata, Cancer Sci, 2019)。 本研究では膵癌におけるHippo pathwayおよび癌微小環境、特にCXCL12-CXCR4 signalingの役割を明らかにし、癌の増殖、進展に関わる経路を制御する可能性のある薬剤を明らかにすることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延による研究環境の不安定さにより進捗に大きな影響を与えていると考えている。これまでより臨床データの収集、検体の精製に予定より時間を要している印象がある。これまで得られた下記の結果を、より進展できるよう研究を推進して参りたい。 ・スタチン内服の有無と膵癌の予後 膵癌に対して根治切除術を施行した218例のうち、術前からスタチンを内服している症例は52例(23.9%)であった。スタチン内服群は非内服群と比べ、OS、DFSともに有意に予後良好である結果が得られた(p=0.024, p=0.049)。 ・スタチンによる膵癌細胞株の増殖抑制効果の検討 4種類の膵癌細胞株を使用し、5種類のスタチンによる抗腫瘍効果を検討するとともに、TAZ/YAP発現との関連や細胞内シグナルの変化を検証した。スタチン投与により細胞増殖能が抑制され、TAZ/YAP発現は低下した。またWestern blottingにてpAKT発現が著明に抑制されていた。
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今後の研究の推進方策 |
・臨床データの集積:予後解析、病理学的所見、KRASやTP53などの既知の遺伝子変異の発現頻度を確認するとともに、新たな治療ターゲットとなりうる遺伝子変異を検索する。Ex-vivoによる体外培養法により分子標的薬の新たなpredictive markerの検索を行う。 ・Vivo:Hippo pathwayとCXCL12-CXCR4 signalingのcross talkの解明および、癌微小環境との関連・膵癌細胞株をCXCL12 recombinantにより刺激し、YAP/TAZの発現が誘導されるか、細胞増殖能、浸潤能などの表現型に影響を及ぼすか確認する。 膵癌細胞株をCAF condition mediumにより培養し、YAP/TAZ、CXCL12の発現量の変化を確認するとともに、表現型の変化を確認する。 CXCR4 antagonistやスタチンによりYAP/TAZ発現量の変化、増殖能・浸潤能とった表現型変化の抑制を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により学会開催形式がハイブリッド開催へ変更となる事が多く出張が減った為、未使用額が生じた。
使用計画:試薬、消耗品の購入費に充てたいと考える。また、試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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